その差は鉄道の線路幅にあり? ウクライナとポーランド ロシアの脅威度が段違いなワケ

欧州において鉄道の線路幅、すなわち軌間のバリエーションが豊かなのには、それ相応の背景があります。そしてその線路幅の違いが、国の戦略をも左右しかねないというお話。舞台はウクライナ、ポーランド、そしてロシアです。

トラックを使えばいいじゃない…とはいかない理由は?

 トラックも頼りになりません。ロシア軍の旅団には2個トラック大隊があり、150台の貨物トラック、50台のトレーラー、260台の特殊トラックが定数になっています。ロシアの旅団編制はアメリカなど西側とは違うので単純な比較はできませんが、砲兵火力を重視した内容で、戦車や装甲車の数はアメリカの旅団戦闘団(BCT)の4分の3、しかし砲兵は3倍、防空部隊も2倍です。航空優勢はアメリカ軍に取られることを念頭に、支援火力は自前で持ち、防空力を強化する編制になっているのです。

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ロシア陸軍は多連装ロケット砲などを多用して砲兵火力は充実している。一斉射撃するBM-27「ウラガン」、最大16発を20秒で撃ち尽くす(画像:ロシア国防省)。

 多連装ロケット砲大隊を含む砲兵は、短期集中で大火力を投射できますが大量の弾薬を一挙に消費します。この砲兵部隊に弾薬を完全に補給するのには、56台から90台の貨物トラックが必要になるとされます。しかし150台しかないトラックの半数を、砲兵部隊の弾運びのためだけに割くなど不可能です。

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ロケット弾を打ち尽くすのはあっという間だが、嵩張るロケット弾を前線まで輸送するのは大ごとだ。BM-27に補給する9T452弾薬運搬車(画像:ロシア国防省)。

 この兵站線の特徴からロシア軍は、旧ソビエト連邦領域内で「積極的防衛作戦」は行えますが、領域外で持続的な作戦行動を行う能力は限定的です。鉄道による兵站線が引けるかどうかのゲージの違いが、ポーランドとウクライナの安全保障上のリスクに違いを生んでいるといえます。しかしロシアがウクライナを抑えればまた状況は変わります。キエフ経由の広軌が利用でき、ポーランドのリスクは格段に高まります。

 国境付近に集結した兵力を数えるだけではなく、軍用列車を観察することでロシア軍がどう動くつもりなのか占うことができます。SNSに投稿される鉄道で運ばれる戦車の動画は「ミリ鉄」「撮り鉄」趣味どころではありません。中欧の人たちにとっては死活問題なのです。

【了】

ウクライナのヤバさ際立つ ロシア周辺の広軌路線網

Writer:

1975(昭和50)年に創刊した、50年以上の実績を誇る老舗軍事雑誌(http://www.argo-ec.com/)。戦車雑誌として各種戦闘車両の写真・情報ストックを所有し様々な報道機関への提供も行っている。また陸にこだわらず陸海空のあらゆるミリタリー系の資料提供、監修も行っており、玩具やTVアニメ、ゲームなど幅広い分野で実績あり。

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