独仏因縁の食堂車! オリエント急行で知られるワゴン・リ社の「2419号車」が見た歴史
オリエント急行の名は広く知られますが、その運行会社であるワゴン・リ社が製造した車両のひとつ「2419号車」の知名度は、日本ではあまりないかもしれません。「休戦の客車」とも呼ばれる同車両は、歴史の表舞台に2度も登場しました。
豪華な鉄道車両で知られるワゴン・リ社の歴史に刻まれる「食堂車」
アガサ・クリスティーの有名な推理小説で映画化もされた「オリエント急行殺人事件」、その舞台となった国際長距離列車「オリエント急行」は、豪華寝台車や食堂車で編成された特別な列車で、一等料金は開業当時、一般的庶民の1年分の給料にも相当したといいます。運行は、日本ではワゴン・リ社の呼称で知られる国際寝台車会社で、同社はこの「オリエント急行」をはじめヨーロッパで寝台車や食堂車のサービスを提供する会社として設立されました。
豪華列車は小説だけではなく、現実の歴史の舞台となることもあります。世界史に残る大戦で2回も登場するのが、同社の「2419号食堂車」です。
ワゴン・リ社の2419号食堂車は、厨房と1等旅客用24席、2等旅客用18席が設けられ、1914年(大正3)年5月20日からフランス西部で営業運転に供されていました。第1次世界大戦が勃発すると運休と運行再開を繰り返し、やがて1918(大正7)年10月7日に連合軍総司令官フェルディナン・フォッシュ元帥の司令部用として徴用されます。
司令部の会議用車両とするため、地図を広げられる大きな机やタイピスト用座席、電気照明の新設など、2419号食堂車は改造され、元帥の専用列車編成に組み込まれます。鉄道は戦時には輸送を担うだけでなく、兵器として列車砲や装甲列車が戦闘に参加したり、要人専用列車や司令部機能を持つ列車も編成されたりしていたのです。司令部が高級指揮官およびスタッフ、そして通信機などの機材類と一緒に移動でき、車内でそのまま活動できる列車は便利でした。
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