「山男」EF64をきれいにしたい! 地元の願いに支援の輪 そもそもなぜ甲州・勝沼の地に?
旧線、旧トンネル、そして「EF64」
開通当時の初鹿野~勝沼間は、戦後に新ルートへ変わったため廃線となっていますが、遺構は今も残されています。旧線の大日影トンネルは、線路や水路もそのままに遊歩道として整えられ(現在、経年劣化等のため一時的に閉鎖中)、旧深沢トンネルはレンガ造りの姿のまま「勝沼トンネルワインカーヴ」として、世界的にも珍しいワインの貯蔵庫となっています。年間を通じて温度6~14度、湿度45~65%の環境は、ワイン熟成には最適なのだそうです。
そして「EF64 18」こそ、この旧線で長らく貨物列車を牽引してワイン輸送を担った車両なのです。2006(平成18)年に勝沼ぶどう郷の駅前公園が整備された時、その前年に引退していたEF64 18がモニュメントとして迎えられたのは、ワイン文化を陰で支えた功労者として、地域の発展を支えたかけがえのない存在という市民の思いもあったのでしょう。
以来15年、EF64 18は勝沼ぶどう郷駅を訪れる人たちに親しまれてきましたが、風雨などの影響でだんだんと劣化が目立つようになってきたそうです。車体には色ムラがうまれ、サビや腐食も目立ってきていました。
なんとか現役時代の姿に戻したいと考えた甲州市が打った手は、ふるさと納税ガバメントクラウドファンディング。EF64 18を設置した当時の現役時代の国鉄色に塗り直し、状態よく保存していくための資金を、目標額300万円として募ったのです。期間は2021年8月20日から3か月間でしたが、EF64 18を愛する人たちの反応は早く、わずか1か月で目標額をクリア。最終的には目標額をはるかに超える支援が集まったのだそうです。
ふるさと納税型のクラウドファンディングということで、EF64 18をモチーフにしたグッズなどの返礼品は用意されていますが、支援とともに寄せられたコメントの数々には、まず第一に、美しくよみがえった車両と会いたいという熱い思いがあふれていました。
甲州市によるとEF64 18の復活プロジェクトはすでにスタートしており、12月中旬には寄附者も参加して現在の塗装を剥がすイベントが行われたそうです。「2022年の春にはピカピカに塗装し直した姿をお見せできるでしょう」とのことで、勝沼ぶどう郷駅に咲き誇る桜の中で誇らしげなEF64 18と出会える日が、今から待ち遠しく思います。
【了】
コメント