余裕かますと痛い目見るぞ! 戦車の安全運転の基本 M1「エイブラムス」戦車の場合

どんな地形でも豪快に走り抜けるイメージの戦車ですが、実は相当に繊細な気配りが必要な乗りものでもあります。地形の走り方や暗視装置の取り付け方などについて、米陸軍の主力戦車M1「エイブラムス」のマニュアルから抜粋しました。

M1「エイブラムス」を安全に動かすには

 戦車の安全運転の基本は、とにかく慎重であることです。強力なエンジンと無限軌道(いわゆるキャタピラ)を履いた戦車は、装輪車(いわゆるタイヤで走る車両)が走れないような悪路を走破し、障害物を乗り越え、溝を越えることができますが、どこでも走れるわけではありません。

Large 20220103 01
アメリカ陸軍の主力戦車、M1「エイブラムス」(画像:アメリカ陸軍)。

 舗装道路でさえも慎重さが必要です。カタログスペックでは、アメリカ陸軍の主力戦車であるM1「エイブラムス」の路上最高速度は67km/hとされていますが、60tの鋼鉄の塊がこんな速度で走り続けたら、激しい振動で道路は壊れますし、戦車自身も壊れてしまいます。

 オフロードを戦車で走り抜けるのは、これぞ戦車の醍醐味と思えるかもしれません。しかし、戦車乗員にとっては心配しかありません。スタックしてしまったら、泥まみれになって鋼鉄の塊と格闘しなければならないからです。可能であれば事前に下車して、地形を偵察するくらいの慎重さが必要です。

Large 20220103 02
戦車の巨体を軟弱地形に乗入れるには綿密な地形偵察が必要。北海道大演習場の90式戦車。地面の荒れ具合にも注目(2019年1月16日、月刊PANZER編集部撮影)。

 WW2期のソ連軍戦車兵は、軟弱地面でT-34戦車がスタックしないか見極めるのに、その地面を兵士がほかの兵士をおぶって歩いてみて、足がハマらなければ戦車も通行可能と判断したといいます。T-34-85戦車の接地圧、すなわち、車両重量を2本の履帯の接地面積(接地長×履帯幅)で割った数値が0.81kg/平方センチメートル、人間の接地圧が0.4kg/平方センチメートルから0.5kg/平方センチメートルですので、簡易ながら合理的な判断方法です。ちなみに一般的な乗用車の接地圧は1.5kg/平方センチメートルから2.5kg/平方センチメートル程度です。

Large 20220103 03
M1戦車操縦席ペリスコープの小さな2個の手動ワイパー(アメリカ陸軍画像を月刊PANZER編集部にて加工)。

 操縦手の視界は基本、車体前方にある小さなペリスコープ頼りですが、オフロードを走行すればはね上がった泥ですぐ汚れてしまいます。そこで小さいながらワイパーを装備し、足元ブレーキ左側のフットスイッチでウオッシャー液も吹き付けられます。もっとも、3個あるペリスコープのうち真ん中のひとつだけにしか付いていませんし、ワイパーは手動式です。それでも有ると無いでは大違いです。まさか戦闘中にハッチを開いて手で拭うわけにはいかないのです。

戦車がスタックしてしまったら…陸自の備えは「装軌車回収車」

最新記事

コメント

2件のコメント

  1. 接地圧について述べられているが、もしかしたら大相撲の最重量級力士だと戦車よりも接地圧的には"重い"のではないだろうか?

  2. 33年くらい前にどこかの広場であったように轢かれるほうが悪い、という考え方の乗りものだからワイパーは要らないのかと思った。

記事ランキング

  1. 「USB挿しっぱ」でクルマが“故障”する? 三菱公式の投稿にSNS騒然 「一体ナゼ?」「これマジで起きるよ」
  2. 都市に迫るロシア軍の「弾道ミサイル」が“空中で木っ端みじん”になる瞬間をウクライナ軍が公開 追尾から撃墜まで詳細に
  3. 海自艦がロシア海軍の「超静かな潜水艦」を確認!浮上航行する姿を捉えた画像を防衛省が公開
  4. 海自潜水艦 アメリカ海軍の“歴戦の揚陸艦”を標的に魚雷発射! 実弾演習で巨大な水柱があがる瞬間を公開
  5. 海自「イージス艦の相棒」が火を噴いた!ミサイル発射の瞬間を防衛省が公開 “強力な防空能力”を持つ汎用護衛艦
  1. 家族が「SSSS航空券」を引き当ててしまった…! 乗る前から“異変” 保安検査員も「Oh…」 誰でも起こり得る“緊迫の一部始終”
  2. ETCの手前で「ガシャン!」高速入口に吊るされた「黄色い鎖」の正体は? 傷つく覚悟で“あえてぶつける”超アナログな理由
  3. あと1年足らずで「現金でバス乗れなくなります」 全路線“完全キャッシュレス化”疑問に応えるサイト開設 京王バス
  4. ロシア軍の爆撃機が「真っ逆さまに墜落」 地上に激突する瞬間を捉えた映像が公開 “巨大な黒煙”が立ち上る
  5. 航行中の護衛艦「かが」の周辺に「巨大な海洋生物」が出現! 艦艇勤務ならではの光景を海自公式が公開