余裕かますと痛い目見るぞ! 戦車の安全運転の基本 M1「エイブラムス」戦車の場合

闇夜に動かすこともある…M1「エイブラムス」の暗闇対策

 夜間走行は一般の自動車でも視界が狭くなり慎重な運転が求められますが、戦車は戦場で目立つことが厳禁なので、灯火は必要最小限になります。M1「エイブラムス」戦車では、平時であれば灯火スイッチを「SERVICE LIGHTS」の位置にして前照灯、尾灯を点灯させます。このときはハイビームにすることもできます。

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M1戦車の操縦席配置図(作図:月刊PANZER編集部)。

 ほか、灯火スイッチにはいくつかメニューがあり、「STOP LIGHT ONLY」ではフットブレーキを踏んだときだけブレーキライトが点灯するというものです。「BO」はいわゆる灯火管制下で点灯させるライトのことで、「OFF」では全ての灯火は作動しません。

 無灯火でも行動できるように、戦車には暗視装置が付いています。前照灯は通常用の白色レンズを赤外線レンズと交換し、操縦席に4本の蝶ねじで取付けられているペリスコープ接眼部を外して、暗視装置と交換します。電源線を接続して、右側パネルの暗視装置スイッチを入れます。

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M1戦車操縦席のペリスコープ暗視装置取付け法(作図:月刊PANZER編集部)。

 可視光線を照射しなくても視界が確保できる反面、逆に強力な光を受けると一時的に幻惑されます。総火演の夜間演習では、戦車が暗視装置を使い無灯火で入場してくる際、「絶対にカメラのフラッシュを焚かないで下さい」とアナウンスが繰り返されます。夜間戦闘において、戦車の暗視装置にフラッシュを浴びせれば、戦車の視界を奪うことができるかも、と想像しますが、実際にはフラッシュが届く距離まで接近するのは難しいでしょう。

 悪路や障害を走破するのは戦車の醍醐味かもしれませんが、状況終了後、泥まみれの戦車を点検整備、洗車する重労働が待ち構えています。

【了】

戦車がスタックしてしまったら…陸自の備えは「装軌車回収車」

Writer: 月刊PANZER編集部

1975(昭和50)年に創刊した、40年以上の実績を誇る老舗軍事雑誌(http://www.argo-ec.com/)。戦車雑誌として各種戦闘車両の写真・情報ストックを所有し様々な報道機関への提供も行っている。また陸にこだわらず陸海空のあらゆるミリタリー系の資料提供、監修も行っており、玩具やTVアニメ、ゲームなど幅広い分野で実績あり。

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コメント

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2件のコメント

  1. 接地圧について述べられているが、もしかしたら大相撲の最重量級力士だと戦車よりも接地圧的には"重い"のではないだろうか?

  2. 33年くらい前にどこかの広場であったように轢かれるほうが悪い、という考え方の乗りものだからワイパーは要らないのかと思った。