余裕かますと痛い目見るぞ! 戦車の安全運転の基本 M1「エイブラムス」戦車の場合

坂道も障害物も豪快に…とはいかない戦車の操縦

 障害物を乗り越えるのも戦車の醍醐味なのですが、もちろん限界があります。M1「エイブラムス」戦車は進行方向に対し31度以上の坂を登ったり、同左右に22度以上傾斜した山の斜面のような場所は走ったりできず、車体がずり落ちてしまいます。斜面を昇り降りする場合はできる限り斜面に対して車体を垂直にします。無理に斜めに走行すると履帯が外れてしまいます。登坂時、オートマチック・トランスミッションゆえにギアが自動で頻繁に切り替わるようなら、セレクターをL位置にします。

 坂を下る際にはもっと慎重さが必要です。しっかりとブレーキを踏んで速度をコントロールします。M1「エイブラムス」戦車はガスタービンエンジンですので、ピストンエンジンほどエンジンブレーキは効きません。坂を下るさなかに万一、履帯が外れたり切れたりした場合、転輪にはブレーキがありませんので文字通り暴走してしまい、大変危険です。

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軟弱地を戦車が通った後の大きな轍。スタックしないギリギリの状況(2019年1月16日、月刊PANZER編集部撮影)。

 M1「エイブラムス」戦車が越えられる障害物の高さは106cm以下です。車体が大きく傾斜しますので、操縦手と車長は障害を乗り越えることを全乗員に伝えます。砲身が引っかからないように最大仰角にし、充分に減速してセレクターをL位置にします。障害物にゆっくりと履帯を乗せ、乗りかかったら一気にスロットルを開いてバランスが取れる位置まで登り切ります。車体が水平になったら減速し、履帯が再び前傾してゆっくり接地するまで徐行させます。履帯が接地したら加速して乗り越えます。

 勢いよく飛び越えるようなことは衝撃で怪我をしたり、サスペンションを破損したりするので避けます。ロシア軍はなにかと戦車をジャンプさせてみせる癖があるようですが、大きな衝撃で乗員は怪我をし、戦車は壊れます。展示イベント以外ではあまりやっていないと思われます。

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コメント

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2件のコメント

  1. 接地圧について述べられているが、もしかしたら大相撲の最重量級力士だと戦車よりも接地圧的には"重い"のではないだろうか?

  2. 33年くらい前にどこかの広場であったように轢かれるほうが悪い、という考え方の乗りものだからワイパーは要らないのかと思った。