「2022年注目の竣工船」 電動、LNG、風力に超巨大作業船まで 海からエネルギー革命!
化石燃料由来の新エネ船も!
化石燃料に由来する新たなエネルギーを使用する船も登場します。
MGO燃料近海船(2022年中)
尾道造船(神戸市中央区)では2022年の竣工を目途に、ジャパンエンジンコーポレーション(J-ENG、兵庫県明石市)が開発した新型のMGO(マリンガスオイル)専焼エンジンを搭載する、商船三井ドライバルク向け1万7500重量トン型近海船を建造しています。
MGOは、これまで船舶用ディーゼルエンジンで使用されてきたC重油に比べて、高品質で環境に優しい燃料です。新型エンジンは一つの燃料弁から2種類の異なる液体燃料などを層状に噴射できる層状噴射システムを適用し、MGOと水の組み合せにより、燃費の向上とNOx(窒素酸化物)低減を実現しています。
CO2排出量は従来型の主機を採用した船舶より約6%の削減効果が見込まれており、国際的なCO2削減指標であるEEDI(エネルギー効率設計指標)フェーズ3もクリアしました。
J-ENGは層状噴射システムについて、アンモニアやバイオ燃料など、各種カーボンフリー代替燃料混焼への応用も可能としており、さらなるGHG排出削減へ向けたポテンシャルを持つとしています。
LPG燃料VLGC(2022年中)
日本郵船は同社初となるLPG(液化石油ガス)燃料VLGC(大型LPG運搬船)2隻を新造します。2隻とも川崎重工業の坂出工場で建造し、2022年の竣工予定です。
新造VLGCは、上甲板にカーゴタンクから独立したLPG燃料タンクを装備することにより、貨物とは別に燃料用のLPGを積載することを可能にしました。これにより、船の大きさを維持しながらも、LPG燃料による航続距離の伸長を実現。また、積荷と性状の異なるLPGの補給や、揚荷するLPGとの明確な区別が可能だとしています。
日本郵船グループはSDGs(持続可能な開発目標)の達成に貢献する活動を加速させており、LNG(液化天然ガス)を燃料とする自動車船の連続建造や、今回のLPG燃料VLGCの建造もその一環となります。同社は川崎重工にLPG燃料の大型LPG・アンモニア運搬船(VLGC)2隻も発注しており、2024年の竣工予定です。
【了】
Writer: 深水千翔(海事ライター)
1988年生まれ。大学卒業後、防衛専門紙を経て日本海事新聞社の記者として造船所や舶用メーカー、防衛関連の取材を担当。現在はフリーランスの記者として活動中。
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