道路になっていた「JR肥薩線」 鉄道信号の下を走るトラック 豪雨災害から復旧への遠い道のり

道路転用されていない箇所は手付かず

 一方、仮設道路に転用されていない肥薩線の線路・軌道敷は、波打つように曲がったレールや、基礎部が流失した路盤が手付かずのまま残っています。築堤が崩壊した箇所では、地中のケーブルが引きちぎられた断面を晒したまま残されている場所もあり、工具を持つ地元の有志が尖った部分を切断したそうです。

 鉄道と並行する国道219号も多くの区間が許可車両しか通行できず、外部から乗り入れた車両が球磨川ぞいを移動することはとても困難です。また通行可能な場所も路肩がひび割れ、柵が張られるなど以前のように通行できる状態ではありません。

くま川鉄道は復旧したのに JR九州、重い負担

 球磨川沿いの熊本県八代市、球磨村、芦北町、人吉市は、令和2年7月豪雨による道路・鉄道の被害が集中しました。うち道路に関しては、国道219号に加えて熊本県道も含めた約100Kmの災害復旧事業を国が代行しています。実はこの地方を災害が襲う2週間前(2020年6月20日)に、被災地の県道を国が代行して復旧できる「権限代行制度」を盛り込んだ道路法の改正が施行されたばかり。今回の災害復旧は図らずも適用第1号となりました。

 しかし鉄道は、現在のところ復旧の動きを見せておらず、JR九州の青柳俊彦社長も、復旧について厳しい見通しを出しています。

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橋脚を残し流出した球磨川第二橋梁(宮武和多哉撮影)。

 その要因として、2021年に部分復旧を果たした「くま川鉄道」と同じスキーム(枠組み)を使えない事情があります。くま川鉄道の場合は、「過去3年間の事業者の経常損失」などの条件を持つ「特定大規模災害等鉄道施設災害復旧補助」という枠組みによって、費用のほとんどを国・自治体で賄うことができました。しかしJR九州はコロナ後も短年黒字を確保しているため、「鉄道軌道整備法」により国と自治体からの補助を受けられても、補助額は復旧費用の4分の1です。

 JR九州の重い負担も復旧を阻む要因になっています。2016年の熊本地震から多くの区間で運休が続いていた豊肥線は、2018年に改正施行されたこの枠組みに基づき、約50億円の復旧費用を国・自治体とJR九州が折半する形で全線復旧を果たしました。しかし肥薩線の場合、復旧にかかる費用が100億円を超えることが確実視され、折半したとしてもJR九州単独で対応できるものではありません。

【「災害に強い道路をつくっています」←そこは線路】肥薩線の地図と現在の状況 画像で見る

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コメント

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1件のコメント

  1. そのままなし崩し的にBRTになりそう