日本初 工場送迎バスに“一般人どうぞ” 路線バス補う奥の手に? 湖西市の実験「BaaS」

低コストで市民の足確保

 湖西市によると、運行にあたって準備したものは、送迎バスの車体に貼る「BaaS」と書かれたマグネットステッカー、アスファルトにスタンプを押すように施工する乗り場表示、そして予約を各社のドライバーに伝達する「MONET Technologies(モネ・テクノロジーズ)」の配車システムなどで、通常の路線バスを開設したり増便したりするより、ずっと低コストだといいます。

 社会実験は順調に進み、多い区間では、運行10日間で約70~80人が利用しているとのこと。なお運賃は現金ではなく、今のところ専用の回数券での支払い。将来的にはアプリ決済を視野に入れているそうです。

クルマ関連城下町ならではの「BaaS」

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車内に貼り付けられた社員・関係者用のBaaS告知(宮武和多哉撮影)。

 静岡県の最西部に位置する人口約6万人の湖西市は、トヨタグループの創業者・豊田佐吉の故郷としても知られ、自動車部品・電子部品などの工場が立ち並んでいます。国道1号、301号を中心に幹線道路の整備が進み、自動車の製造現場が身近ということもあって、“クルマ社会“化が早くから進んだ地域でもあります。

 いまでも移動手段の7割を自家用車が占めるという湖西市ですが、高齢化が進み運転に注意を伴う人々も多く、また農作業を次世代に受け継いだ人々など、仕事上での運転を必要としない人々も出てきました。しかし湖西市の路線バス網は静岡県内でもかなり散々たるもので、かつて遠鉄バス・国鉄バス(JRバス)が頻繁に運行していたバス路線は平成初期に相次いで廃止、2021年には遠鉄バス最後の1路線も撤退しています。

 代替手段として整備されているコミュニティバス「コーちゃんバス」はほとんどの路線で1日3、4本ほど。かつ、朝晩の子供の通学に合わせて運行している場合も多く、買い物や通院が必要な時間にはバスがなく、増発しようにも運転する人手も足りないというミスマッチも起きていました。

 そうしたなで、朝方には駅前に何台も列をなす送迎バスの活用は、「企業城下町」とも言える湖西市ならではのアイデアと言えるでしょう。

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コメント

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4件のコメント

  1. 「社員の通勤のために企業が仕立てた送迎バスは、法律上の枠組みでは「特定旅客自動車運送事業(特定輸送)」にあたります。路線バス車両を使用していても、基本的に関係者以外の乗車はできず、ナンバープレートも自家用の“白”です。」とありますが、少々異なります。
    「社員の通勤のために企業が仕立てた送迎バスで、運送事業者に車両・運転を外注するもの」が特定輸送であり、これは事業運送なので緑ナンバーです。
    では白ナンバーの送迎バスはなにかというと、これは特定輸送ではなく、ただの自家用車です。道路運送法は自家用と、他者を有償で運ぶ営業用とを、車の持ち主を目印にして区分しますので、車の持ち主が送迎を実施する企業自身であればこれは自家用です。なお、この場合でも運転手を運送事業者に委託することは、運送事業ではなくドライバーの派遣になり、やはり扱いは変わりません。

    • ご指摘ありがとうございます。記事を修正いたしました。

  2. 豊橋科学技術大学ではなく、豊橋科学技術大学院大学です

    • すいません豊橋技術科学大学ですね