トラックが弱点? 北朝鮮ミサイル事情 文字通り「足元がおろそか」なふたつのポイント

自力では移動させられない? 「足元」は全て外国製を改造

 ふたつ目のポイントが北朝鮮のTELを製造し、維持運用する能力です。単純なトラック車台のようですが、大陸間弾道弾(ICBM)は重量が約80tにもなり、TEL自身の重量を加えたら100tを軽く超えます。そのような超大型トラックを製造、維持管理するには相応の自動車工業力が必要です。しかしミサイルは作れてもTEL用トラックは作れないというのが北朝鮮の工業力のアンバランスな実態であり、泣き所でもあるのです。

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準中距離弾道ミサイル「北極星2号」を搭載する装軌式(いわゆるキャタピラ式)のTEL。北朝鮮にとっては大型装輪式TELよりも扱いやすいといわれる(画像:朝鮮中央放送)。

 TEL用のトラックは全て輸入車です。北朝鮮へのミサイルおよびミサイル部品の輸出は2009(平成21)年6月12日の国連安保決議1874号で規制され、TELに転用できるトラックも対象になります。ところが2012(平成24)年4月15日の金日成生誕100年記念パレードに、8軸式TELに搭載された大陸間弾道弾とされる「火星14号」(アメリカ国防総省呼称:KN-20)が登場しました。このTELは中国国営の湖北三江航天万山特殊車両製トラック「WS51200」がベースであることが判明します。キャビンの外見からも類似性は明らかでした。

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2012年4月15日の金日成生誕100年記念パレードに登場した大陸間弾道ミサイル「火星14号」を搭載した8軸TEL。車体の出所は中国だった(画像:朝鮮中央放送)。

 湖北三江航天万山特殊車両は、ベラルーシのトラックメーカーMAZと提携しています。WS51200はMAZの技術を流用し、アメリカ企業クミンズ社による出力700馬力のKTTA19C700ターボチャージャー付きディーゼルエンジンを搭載して、最大積載量80tとなっています。前3軸と後3軸が操舵でき、大きさの割に小回りが利くとされます。

 2009年以降に中国から北朝鮮へ輸出されたのであれば、明白な国連決議違反になります。このWS51200の入手をめぐる外交情報戦では日本の諜報能力が発揮されました。

 2011(平成23)年10月、大阪港にあるカンボジア船籍の貨物船が寄港します。日本の税関と海上保安庁が立ち入り検査を実施、船内の輸出目録に「WS51200」が2011年8月に中国上海から船積みされ、8月3日に北朝鮮の南浦港へ輸送された記載が見つかり、ミサイル関連物資と疑った日本政府はアメリカと韓国に通報します。

中国も言い逃れできず…「火星14号」のTELの原型か WS51200トラック

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コメント

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2件のコメント

  1. なかなか面白い考察ですね
    搭載されてるミサイルに視線が集まってしまいますが搬送する車両自体が特殊車両なので色々な制限がかかり運用が限られてくると言われれば確かにそうです
    同様列車搭載型も発車列車、牽引車、メンテナンス車、発射まで取り外されてるミサイル機器のアタッチメント車など運用面から考えると発射される大まかなポイントが分かるかもしれません

  2. 日本で検討中の敵基地攻撃ミサイルがトラックでなく潜水艦や航空機から撃つのは、日本にもこれに似た事情があるのかも(?_?)
    50tの90式戦車でも大変でしたし(>д