トラックが弱点? 北朝鮮ミサイル事情 文字通り「足元がおろそか」なふたつのポイント

日本も貢献 ミサイル関連物資をめぐる情報戦の顛末

 日本政府がこのカンボジア船をモニターし、日本に入港したタイミングを失せず、立ち入り検査を実施して中国による国連決議違反の証拠を手に入れた諜報能力はなかなかのものだと思いますが、詳細はいまでも明らかになっていません。一説には、内閣衛星情報センターが運用している情報収集衛星を使って北朝鮮に出入りする貨物船をモニターし続けた情報蓄積の成果、ともいわれています。

 日本の外務省は「ただちに安保理決議違反とはいえないと判断した。トラックを輸出しても北朝鮮が改造した可能性もある」との立場を取り中国政府に確認しませんでした。日本の諜報能力を秘匿したかったのが本音のようです。

 前述したパレードの4日後、当時のパネッタ米国防長官が下院軍事委員会の公聴会で、北朝鮮のミサイル開発に「中国の協力があったと確信している」と証言したのは、日本の情報収集の裏づけもあったのです。証拠を突き付けられた中国は事実をしぶしぶ認め、木材運搬用だったと釈明しました。これ以降、中国は北朝鮮のミサイル開発への関与を控えるようになったようです。

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朝鮮労働党75周年パレードに登場したTEL。WS51200ベースを隠すためかキャビンは改造されているようだ(画像:朝鮮中央放送)。

 WS51200の北朝鮮への輸出総数は不明ですが、10台前後といわれます。その後、北朝鮮は大型トラック車台が入手困難になり、それまでに入手していたものの改造を繰り返して使いまわしているようです。2020年のパレードに登場した、ICBMを搭載した11軸式の超大型TELは、WS51200に中間軸を追加して車体長を伸ばしたもののようです。パレードに参加したTELを見ると統一性が無く、調達には苦労している様子がうかがえます。昨年9月15日にミサイル発射が確認された鉄道移動式「鉄道機動ミサイル連隊」は、TEL不足を補完するものではないかとも思われます。

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北朝鮮の鉄道機動ミサイル連隊が実射を行ったとされる地点(黄ピン)。線路に2か所のトンネルと北(右上)に管理用らしき施設(赤ピン)が見える(画像:GoogleEarth)。

「ミサイルは心理的兵器」とよくいわれます。実際に使うことより存在をアピールすること自体に意味があります。「敵基地攻撃能力」の議論も必要ですが、そのアピールの正体を見極めることも重要です。

【了】

中国も言い逃れできず…「火星14号」のTELの原型か WS51200トラック

Writer: 月刊PANZER編集部

1975(昭和50)年に創刊した、40年以上の実績を誇る老舗軍事雑誌(http://www.argo-ec.com/)。戦車雑誌として各種戦闘車両の写真・情報ストックを所有し様々な報道機関への提供も行っている。また陸にこだわらず陸海空のあらゆるミリタリー系の資料提供、監修も行っており、玩具やTVアニメ、ゲームなど幅広い分野で実績あり。

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コメント

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2件のコメント

  1. なかなか面白い考察ですね
    搭載されてるミサイルに視線が集まってしまいますが搬送する車両自体が特殊車両なので色々な制限がかかり運用が限られてくると言われれば確かにそうです
    同様列車搭載型も発車列車、牽引車、メンテナンス車、発射まで取り外されてるミサイル機器のアタッチメント車など運用面から考えると発射される大まかなポイントが分かるかもしれません

  2. 日本で検討中の敵基地攻撃ミサイルがトラックでなく潜水艦や航空機から撃つのは、日本にもこれに似た事情があるのかも(?_?)
    50tの90式戦車でも大変でしたし(>д