奇抜すぎる「軍艦の迷彩」何のため? 大戦中のシマシマ 幾何学模様…陸とは発想が違う
二度の世界大戦で、軍艦や輸送船は潜水艦の魚雷をかわすため、船体に奇抜な迷彩塗装を施していました。周囲の風景に溶け込ませる陸上兵器の迷彩とは、そもそも発想が異なる当時の軍艦の迷彩を紹介します。
潜水艦対策で幾何学模様をペイント
第1次世界大戦から第2次世界大戦にかけて、多くの軍艦に奇抜な迷彩塗装が施されていました。現代でも迷彩は周囲の環境と区別しにくくするため、軍服や戦車などに見られます。しかし当時の軍艦に見られる迷彩は、むしろ姿や形を見誤らせて狙いを逸らすために、あえて奇抜で派手な図柄にしていたのが特徴でした。幾何学模様が交錯する艦艇迷彩とはいったいどのようなものだったのか、そのあたりの事情を見てみましょう。
19世紀後半、日本やアメリカなどの軍艦は白く塗られていることが多々ありました。それが20世紀に入る前後に、現代でもなじみのある灰色に塗られるようになったのです。その理由は、灰色の方が海や空、曇天の景色に同化しやすいためでした。
灰色も迷彩塗装の一種ですが、潜水艦の登場をきっかけに、軍艦の迷彩は劇的な変化をとげるようになったのです。
そもそも、潜水艦の魚雷は大砲よりも目標に到達するまで時間がかかります。そのため潜水艦が目標にした船を潜望鏡で捉えた際に、そのときいる位置に向けて魚雷を発射しても、命中しません。なぜなら、魚雷が進む間に船が目標の位置から先に進んでしまうからです。そのため、潜水艦は魚雷が命中するように船が進む方角に向けて、未来位置を予測して発射するのがセオリーでした。
潜水艦が魚雷を発射するためには、まず目標に対する「距離」「方角(針路)」だけでなく、大型の戦艦なのか、高速の巡洋艦なのか、はたまた低速の輸送船かといったような船の「種類(艦種)」と「速力」といった数値が事前に必要となります。それらのデータを発射指揮盤という機械式アナログ・コンピュータに入力すると、高校の数学で習う三角関数を基本にして、魚雷を命中させる位置が決まります。
捕鯨船のキャッチャーボートは軍艦のようなグレーに塗装されているから、どうやら海上では一番有効な迷彩色といえるのだろう。