原因はまたも「バーティゴ」か 空自小松基地F-15DJ墜落 優秀パイロットを襲った悲劇

石川県の小松基地を離陸したF-15DJが墜落し、乗員が犠牲になりました。その要因として真っ先に推定されるもののひとつが空間識失調、いわゆる「バーティゴ」と呼ばれる現象です。どのようなものなのでしょうか。

熟練者でも起こりうる「空間識失調」

 2022年1月31日夕方、石川県の小松基地を離陸した、航空自衛隊飛行教導群のF-15DJが、約5km離れた日本海沖で消息を絶ちました。見つかった破片などから2月10日に墜落と断定。その後パイロットも周辺の海域で発見され、残念ながら搭乗していた2名の死亡が確認されています。

 原因の究明は今後、機体の引き揚げ後に本格化しますが、推測として真っ先に挙げられているのが「バーティゴ(pilot vertigo)」と呼ばれる「空間識失調」です。なぜここまで早く「空間識失調」原因説が推測されたのでしょうか。

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消息を絶った航空自衛隊のF15戦闘機(空自小松基地の公式ツイッターより)

 これは一言でいえば、パイロットを常に狙う危険な現象だからです。

 空間識失調は、専門書をあたると「パイロットが航空機の姿勢や運動状態を客観的に把握できなくなった状態」と定義されます。つまり、自分が認識している飛び方と実際の飛行姿勢などが、著しくかけ離れた状態になるということです。

 典型的な原因としては、飛行運動により平衡感覚を司る三半規管が一時的に異常を来たすことをはじめ、雲中飛行で感覚が崩れる、夜間に漁船の灯火を星と間違えるなどが考えられます。

 実はこの空間識失調、ベテランも新人も技量も関係なく起き、確実に防ぐ手立てはありません。異常な飛行姿勢を誘発して事故につながりかねず、そのため大変危険視されている現象のひとつです。

 1998(平成10)年2月に起きた海上保安庁のシコルスキーS-76Cの事故、2019年4月の航空自衛隊のF-35の事故でも、空間識失調が推測されています。前者の海保機の事故報告書でも、空間識失調は「夜間や水平線があいまいで視界があまりよくない状態では陥り易い」と述べられています。

 ちなみに当該機が所属していた飛行教導群、通称「アグレッサー」部隊は、全国の空自基地を回り「仮想敵」として戦闘機と対空戦訓練をする部隊で、空自戦闘機部隊の技量向上を図るために存在します。この目的から、乗員は熟練者揃いで、高い技能をもちます。当該機のパイロットも、曲技飛行チーム「ブルーインパルス」の隊長を務めた経験もあるほど、腕の立つ人物です。

【写真】F-15のプロトタイプ1号機

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コメント

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6件のコメント

  1. そうか、バーティゴ原因にするのが一番丸く収まるのか。離陸直後になるかな?本気で言ってるの?

  2. 熟練の操縦者が2人も失われたという事実も含め重大な事故であったと思います。
    遺族の方々にはお悔やみ申し上げます。
    F-16の最新型には位置不覚や操縦者の気絶による急降下に対応して自動的に機の位置を修整するシステムが導入されていると聞きます、F-15には導入されていなかったのでしょうか、今回の事故を見るに高度が低いようですから、そういうシステムがあったとしても難しかったのではないかなと想像しますが、もしあれば貴重な命が助かった可能性もあったのではないかと考えます。
    また、当初の報道にあった火柱、火の玉、火球という表現を見たのですが、今回の記事には特に言及をされていないように見えます。
    やはり火柱等の爆発したと思われる表現は報道の過剰反応だったのでしょうか。報道に不信感を募らせます。

  3. 何の情報もない記事です。
    フライトレコーダーの回収ができる可能性も見えています。その結果を待ちましょう。
    消去法で思いついた推測は不要と思います。

  4. 空間識失調のせいにするのは原因不明と言ってるようなものとたいして変わらないのでは、
    計器類が正常なら高度や機体姿勢、方角などは分かる以上は、
    機体のトラブルでなければ
    パイロットに何らかの認識ミスか意識喪失などの異常状態が起こったとしか言いようがないけど、
    それを空間識失調でひとくくりにするのは
    墜落原因が判明していないものをもっともらしく誤魔化してるだけですよ。

  5. ふざけるな。空戦訓練後ならともかく、通常離陸中で、計器類の信用があるなかで、複座のF15でバーディゴはあり得ない。
    知識たらなすぎだわ。この記者は。

  6. 機密事項の発表は信用出来ません。