相次ぐ「地域まるごと電車・バス無料デー」 街が潤う! お祭りで終わらせないための課題も

熊本県・岡山県・高知県で、鉄道・バスなどの運賃を1日だけ無料にする試みが相次いで行われました。利用者が増え市街地の賑わいや増収を生む中、新たな課題も見えているようです。

一時のお祭りで終わり? 無料デーを今後につなげるには

 運賃無料デー開催後にどのような効果があり、どのような事象が起きたのかをしっかり検証することも重要です。たとえば熊本では、ヤフー、Traffic Brainなどと連携した「SAKURAMACHI DATA Project」、岡山ではKDDIなどとの協力で、通常時と比べた利用実態や「いつも利用していない人がどれだけ利用しているのか」「どの区間の利用が伸びたのか、どのような問題があったのか」などを検証しています。

 この思い切った社会実験の使命は、開催当日の賑わいを作るだけでなく、今まで公共交通を利用していなかった層を取り込む目的もあります。通常時にはなかなか取得できないデータや生の声を拾い、今まで利用していなかった人々にアプローチする利用環境の改善を行うことが求められています。

 もちろん運賃を無料にしたところで、それが周知されなければ、なかなか効果を発揮しません。前述の桂浜水族館でも、当初は無料デーそのものが浸透しておらず、路線バスでの来場客は少なかったのだとか。

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岡山電気軌道の路面電車。無料デーの対象となった(宮武和多哉撮影)。

 周知にも力を入れた例としては、前述の東急池上線は事前に“生活名所 池上線“とうたったさまざまな目的地・楽しみ方を拡散していたこともあり、利用者数は前年比3.7倍に当たる56万人、戸越銀座や洗足池はこれまでになく賑わい、その後も2回、3回と再訪する人も多かったといいます。「電車・バスが無料」だけでなく「無料で行った先で何かを体験できる、トクできる」状態でないと次の乗車にはつながりにくいため、より市街地の魅力をPRするような事前の周知も必要でしょう。

 自家用車が人々の足となり、郊外の大型店に押され市街地が空洞化、その問題点も指摘されるなか、電車・バス無料デーは、各地で乗客増、地域への経済効果など一定の成果を挙げています。この賑わいを開催日だけの“お祭り“に終わらせないためにも、事前の準備から開催後のデータ・ノウハウの取得・検証も合わせて考えることで、社会実験としての重要性も増すのではないでしょうか。

【了】

【2度見必至】無料デー対象「日本一短い駅間」あまりにも短い!(写真)

Writer:

香川県出身。鉄道・バス・駅弁など観察対象は多岐にわたり、レンタサイクルなどの二次交通や徒歩で街をまわって交通事情を探る。路線バスで日本縦断経験あり、通算1600系統に乗車、駅弁は2000食強を実食。ご当地料理を家庭に取り入れる「再現料理人」としてテレビ番組で国民的アイドルに料理を提供したことも。著書「全国“オンリーワン”路線バスの旅」など。

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コメント

1件のコメント

  1. 無料じゃなくても「1乗車100円」だったとしても「1日1000円」でも利用者は殺到していたと思う。必ず整理券を取る必要があり、その分整理券の使用も急増したのもありその費用もあるだろうし、利用の傾向の分析も割と曖昧だったと思う。熊本・岡山・高知ともにICカードが導入されているのだから、いっそICカード利用限定で今後もこういう企画をされたらいいのにって思う。

    結論として、手ごろな価格であれば利用されるということがよくわかる。