芸備線 生活利用促進の取り組み「成果なし」JR西日本が所見 イベント集客は成功も
乗客は確かに増えたものの…
この検討会の下での取り組みでは、様々な施策が打たれました。先述の臨時列車・増便のほか、「カープラッピング列車」の運行や、鉄道とバスが片道ずつ格安セットになった「バス&レール どっちも割きっぷ」の発売、「県境鉄道サミット」などのイベント開催、駅カードの配布、パンフレットやSNSでの情報発信など多岐に渡ります。
具体的な結果としては、特に閑散区間である備後落合~備後庄原~三次については、利用客が土休日で前年比2.3倍、平日で1.2倍に増加。同じく閑散区間である備後落合~東城~新見では、土休日で2~5倍に増加。それを主として牽引したのは、「利用促進期間」として先述のイベントや増便を集中的に行った2021年10月~12月の増客でした。
ただ、「利用促進期間」による増客の内訳を見てみると、土休日ではその約半分が「新見・庄原市内で乗降がなく、ただ通過した客」で、残りが「両市外から両市内へ、観光などで来た(生活利用以外で来た)客」となっています。平日に至っては、増客のほとんどが「通過客」でした。
この増客の傾向は、芸備線の存廃問題が報じられたこともあり、「JR西日本 どこでもきっぷ」や「青春18きっぷ」などを利用して乗り通すなどの「長距離旅行客」が増加したことも一因に考えられます。2021年7月には新見発備後落合行きの列車で、車内が満員となり客が全員乗車できない「積み残し」が発生したほど、全国から注目が高まっていました。
利用客の底上げを果たすべき線内各駅の生活利用者が減少の一途を辿るなか、イベント開催に恒常的な増客を頼るのは、いずれ「息切れ」に直面する可能性があります。現状の打開には、さらなる施策を見出していく必要に迫られています。
取り組みの総括となる可能性もある次回の検討会について、JR西日本(岡山支社)側は「遅くとも次のゴールデンウイーク前後に開催してほしい」と要望しました。
【了】
1両編成が1日3往復、県境なら高校生も少ない。なぜ鉄道でなければいけないのか、残したいならその必然性を見い出さないと。