空飛ぶ“アジの開き”!? ボーイングじゃない異形のフランス飛行機「B763」とは A380の祖先かも
もう一つの「B763」その遍歴
初飛行後、「ブレゲー761」は、いくつかアップデートが加えられます、エンジンをフランス製のものからアメリカのプラット・アンド・ホイットニー社の名エンジン、R-2800「ダブル・ワスプ」に換装しパワーアップ。垂直尾翼も2枚から、中央に舵がない小さな翼をつけ3枚構成とすることで、安定感を高めました。こうして、冒頭の「B763」こと「プレゲー763」が生まれでき、1950年代初頭にエールフランス航空で12機の採用が決定。2階席に59人、1階席に48人搭乗でき、100人超を乗せることができました。
エールフランスではこの機体を、旅客機として10年ほど運航。その後一部は同社の貨物機として、一部はフランス空軍に移管され輸送機として使用されています。とくに着陸装置の堅牢さには定評があったようで、砂漠を含めた未舗装の場所でも、安定的に着陸できる機体であったといわれています。
ただし、これらプレゲーの「アジの開きみたいな飛行機」は、シリーズ累計でも20機に満たずに製造を終了しました。なお、シリーズの“愛称”として知られる「デュポン」は、フランス語で「ダブル・デッキ」という意味を持ちますが、型式によって別の公称があり、たとえばエールフランスの使用したブレゲー763旅客型は「プロヴァンス」という二つ名を持ちます。
ちなみに、プレゲー「デュポン」シリーズのなかには、実現こそしなかったものの、実際に「767」という派生型も計画されていました。もうひとつの「B767」とも呼べるこの計画案は、イギリスに売り込むためにロールズ・ロイス社製のターボプロップ・エンジンを搭載したタイプだったとのことです。
【了】
Writer: 種山雅夫(元航空科学博物館展示部長 学芸員)
成田空港隣の航空科学博物館元学芸員。日本初の「航空関係専門学芸員」として同館の開設準備を主導したほか、「アンリ・ファルマン複葉機」の制作も参加。同館の設立財団理事長が開講した日本大学 航空宇宙工学科卒で、航空ジャーナリスト協会の在籍歴もある。
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