「空飛ぶ戦車」は限界に達したのか 墜落のKa-52攻撃ヘリ 精彩欠くロシア用兵の要

「全縦深同時打撃」の要たる攻撃ヘリ…のはずが

 ヘリコプターが実用化されてから地上攻撃にあたる「航空戦力」は、固定翼の攻撃機しかなかった時代より臨機応変な運用が可能になり、さらに連絡手段の技術的発達が攻撃ヘリコプターの価値を高めました。

 陸上自衛隊のある機甲科幹部は、攻撃ヘリコプターに搭乗し自分の部隊を空から見て冷や汗が出たといいます。ミサイル万能論が闊歩していた1972(昭和47)年6月には、NATOの演習で対戦車ミサイル搭載攻撃ヘリコプターが16:1のキルレシオ(攻撃ヘリコプター1機の損失で16台の戦車を撃破する)を示しました。一方旧ソ連軍が実施していた研究でも同様の結果が出たといわれます。

 こうして攻撃ヘリコプターは「全縦深同時打撃」を担う重要アセットとして高性能化していくことになったのです。

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2022年3月初旬に撮影されたという、ウクライナへ夜間出撃するKa-52(画像:ロシア国防省)。

 しかしウクライナでは、無人機(ドローン)の働きが目立つ一方でこの「空飛ぶ戦車」の活動が低調な印象です。その背景のひとつには、いわゆる制空権をロシア、ウクライナとも確保していないという珍しい状態にあるという指摘もあります。双方が保有する各種対空システムの影響で、高価値アセットである有人機をうかうか飛ばせないというのです。

 ウクライナ国防省が投稿した、同国軍が撃墜したとされるKa-52のコクピットは、それほど激しく損傷していません。乗員は脱出できたのでしょうか。計器盤の左端に聖人を描いた小さな「イコン」が張り付けられていて、「空飛ぶ戦車」という厳つい機体も人間が飛ばす有人機だということを物語っています。遠隔操縦で無感情に画像を送り、攻撃を仕掛ける無人機(ドローン)の働きぶりと対比すると、人間の性に慨嘆せざるをえません。

【了】

キエフ近郊に墜落したロシア軍のKa-52攻撃ヘリ

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Writer: 月刊PANZER編集部

1975(昭和50)年に創刊した、40年以上の実績を誇る老舗軍事雑誌(http://www.argo-ec.com/)。戦車雑誌として各種戦闘車両の写真・情報ストックを所有し様々な報道機関への提供も行っている。また陸にこだわらず陸海空のあらゆるミリタリー系の資料提供、監修も行っており、玩具やTVアニメ、ゲームなど幅広い分野で実績あり。

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