時速100万km! U-2「ドラゴンレディ」偵察機の史上最高速度はいかに記録されたのか
「時速100万km」は何を基準にどう計測したのか
もし宇宙マイクロ波背景放射がビッグバンの残り火であることが正しいならば、ほんのわずかに「まだら模様」となっていると考えられたため、NASAのエイムズ研究所は、大気と宇宙の縁まで上昇することができノイズを受けにくいU-2に、高感度な電波センサーを搭載し、まだら模様を検出しようとしました。
1976年に研究飛行が実施されると、科学者たちはその測定データに驚きました。宇宙マイクロ波背景放射にまだら模様は一切、検出されない(当時)どころか、ある方向に向かって「青く見えた」のです。
青く見えた理由は「ドップラー効果」で説明できました。ドップラー効果とは、こちらに向かってくる救急車のサイレンは高い音に聞こえ、逆に離れてゆくサイレンは低い音に聞こえる現象としても知られます。光でも同じようにドップラー効果は発生し、「青く見える(高い周波数の光になる)」場合は近づいている、「赤く見える(低い周波数の光になる)」場合は遠ざかっていることがわかります。色の変化を計算することで速度も求めることができ、航空用レーダー、野球のスピードガン、交通速度違反を検出するいわゆる「ネズミ捕り」など様々な分野で活用されています。
ビッグバンの残り火である宇宙マイクロ波背景放射の色の変化から、U-2が時速100万kmで移動していたことがわかりました。これを「対宇宙マイクロ波背景放射速度」と呼ぶことにします。しかし、この数字が何を意味するのかがわかりませんでした。U-2の飛行速度や地球の自転はどちらも時速1000km程度とたかが知れていますし、地球が太陽をまわる公転でさえたったの時速10万kmです。
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