「その兵器ウクライナにいい」交渉上手なだけでないゼレンスキー大統領の安全保障戦略

もうひとつのゼレンスキー氏絶賛兵器とは?

 ブッシュマスター以外にもう一つ、ゼレンスキー大統領が名指しで能力を高く評価し、供与を求めた兵器があります。それはイスラエルが開発した防空システム「アイアンドーム」です。

 アイアンドームは「タミル」ミサイルの20連装ランチャーとレーダー、指揮ユニットから構成される、ロケット弾や砲弾などの迎撃を主な用途とする防空システムです。安価な敵のロケット弾や砲弾などの迎撃に、高価な地対空ミサイルを使用するのは割に合わないことから、「ダービー」空対空ミサイルなど、既存の兵器の技術をできる限り流用して開発されました。他の防空システムに比べて、調達と運用のコストが安価である点が特徴の一つとなっています。

 また迎撃成功率の高さも、アイアンドームの特徴の一つです。アイアンドームは2011年3月からイスラエル国防軍に配備されており、同年末の迎撃成功率は約70%でしたが、2012年6月13日付のIsrael Defense(Web版)は、同月に迎撃成功率が90%以上に達したと報じています。

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「アイアンドーム」の20連装ミサイルランチャー(竹内 修撮影)。

 ロシア連邦軍のロケット弾や砲による攻撃を受けているウクライナにとって、アイアンドームは喉から手が出るほど欲しい装備品であることは間違いありません。

 しかしイスラエルはアメリカや西欧諸国と異なり、ウクライナへの防衛装備品の供与には慎重な姿勢を示しています。また、仮に供与が実現したとしても、旧ソ連型の防空システムが主流を占めるウクライナ防空軍による運用開始までにはかなりの時間を要するものと考えられます。

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