ザ・魔改造! 農業用トラクター転用からのイタリア「大砲牽引車」の系譜 旧日本軍も試験

見た目まるで「チョロQ」な新型牽引車の登場

 パヴェージ社がP4型砲牽引車を開発した当時、すでに各国で不整地に強い装軌(キャタピラ)式の砲牽引車が現れていましたが、装輪式の砲が、安価で調達しやすいため、同社の牽引車はギリシャやポルトガル、スペイン、スイス、ハンガリーなどの各国に輸出されており、旧日本陸軍も研究用に初期のP4型を1両輸入しています。

 しかし我が国では、装軌式のアメリカ・ホルト社製トラクターが採用され、こちらが国産ガントラクターの基礎となったことから、P4型のような砲牽引車は普及せずに終わりました。

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前後に分割された独特なシャーシ構造のP4型から発展したM26型砲牽引車のマニュアル写真。ソリッドタイヤには不整地用の突起が付けられており、路上では外側に畳まれた(吉川和篤所蔵)。

 イタリア軍砲兵部隊の近代化を目的に配備されたP4型ガントラクターでしたが、1930年代以降になると来るべき機動戦に対して鈍重な機材では追いつけない事実が指摘されます。そこで、イタリア陸軍は新たな車輪式の砲牽引車を生み出そうと、SPA社において軽量のTL37型を開発したのち、さらに大型で高速の新型砲牽引車の研究を推進しました。

 その結果、イタリア陸軍は第2次世界大戦前の1938(昭和13)年に、ブレダ社とアルファ・ロメオ社およびSPA社に中型ガントラクターの試作車両を発注します。これは兵員10名まで乗車可能で、最大5tの牽引能力を持ち、最高速度はTL37型の38km/hより速い40km/h以上で走れるという条件でした。競作の結果、1941(昭和16)年に堅牢で信頼性のあるSPA社案が採用され、「TM40型」砲牽引車として制式化されます。

【貴重!】旧日本軍によるイタリア製牽引車のテスト中の様子

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