長さ30mで警報機なし 3社の線路をまたぐヒヤヒヤ踏切がなかなか廃止できなかったワケ

3社の鉄道路線が横切るのに、警報機も遮断機もない、いわゆる第4種踏切が茨城県の下館駅付近にありました。安全上の理由から現在は廃止されていますが、地元住民、市、そして鉄道会社が協力し、迂回路が整備されています。

そもそも3社の鉄道路線をまたぐ踏切はレア

 3社以上の鉄道会社の線路をまたぐ踏切は、全国でも珍しいものです。例えば桑名駅(三重県桑名市)の南側には、JR東海、近畿日本鉄道、三岐鉄道をまたぐ踏切があります。ここは3路線全ての軌間(線路幅)が違うというのも特徴です。

 茨城県筑西市には、同じく3路線をまたぐものの、警報機や遮断機が設置されていない、いわゆる第4種踏切がありました。場所は下館駅の西300mの地点。JR水戸線、関東鉄道常総線、真岡鐵道真岡線が通ります。

 真岡鐵道は1988(昭和63)年に、JR東日本から分離・独立する形で開業した第3セクター鉄道です。そうした経緯があり、ここは3社の線路をまたぐ踏切へと姿を変えました。

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真岡鐵道のモオカ14形が通過中。3社の線路をまたぐが、警報機などがない第4種踏切だった(2011年5月、小川裕夫撮影)。

 踏切は駅の近くなので線路の分岐があり、特に水戸線は複線区間のように見えますが、横切る3路線は全て単線です。それでも端から端までは、約30mありました。健康な大人でも渡り切るにはそれなりの時間を要したため、踏切ではしばしば、線路と線路の間で列車の通過待ちをする人もいたほどです。

 明らかに第4種のままでは危険です。かといって、警報機や遮断機を備えた第1種へと改良するのは費用がかかります。踏切に並行して線路をオーバーパスする道路があったものの、そこを通るには高架橋取り付け部の交差点まで遠回りが必要でした。鉄道各社にとっては廃止することが最も手取り早い解決策でしたが、地域住民が使うという点でも早急には廃止できないのが実情だったようです。

 関東鉄道は、踏切を横断する歩行者などに注意喚起する看板を設置。苦肉の策ではありますが、看板では「列車は最高速度時速90キロで運行」「100m先に見えた場合4秒で通過する」「踏切通過時の最大速度差は時速60キロ」といった詳細な説明をして、危険を訴えていました。

 結果的に踏切は、2018年2月23日をもって廃止に。ただしこれには、地元の自治会が市を巻き込んで鉄道会社と協議を重ね、迂回路を設けることで合意したものでした。地域住民には多少の不便を生じさせますが、それよりも安全第一との判断でしょう。

【了】

【踏切の全景】距離は約30m

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Writer: 小川裕夫(フリーランスライター・カメラマン)

フリーランスライター・カメラマン。1977年、静岡市生まれ。行政誌編集者を経てフリーに。官邸で実施される首相会見には、唯一のフリーランスカメラマンとしても参加。著書『踏切天国』(秀和システム)、『渋沢栄一と鉄道』(天夢人)、『東京王』(ぶんか社)、『私鉄特急の謎』(イースト新書Q)など。

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