「パノラマエクスプレスアルプス」 ATCなしで山手線を走れたワケ 特徴の展望室は台無しに
国鉄末期に登場した165系改造の「パノラマエクスプレスアルプス」。団体臨時列車で山手貨物線を走ることは日常の光景でしたが、「山手線」も走ったことがあります。ただATCを搭載しておらず、ある工夫をして実現しました。
テレビ番組の収録で運転
国鉄時代末期の1987(昭和62)年3月に165系電車を改造した「パノラマエクスプレスアルプス」が登場しました。編成はクロ165+モロ164+クモロ165+クモロ165+モロ164+クロ165の6両で、両端の先頭車(クロ165)には、名鉄のパノラマカーや小田急の特急ロマンスカーのように前頭部の展望室がありました。いわゆるジョイフルトレインのひとつです。
「パノラマエクスプレスアルプス」は団体臨時列車をはじめ、臨時急行列車にも使用されましたが、2001(平成13)年に富士急行(現・富士山麓電気鉄道)へ譲渡されました。富士急行では「フジサン特急」として使用され、2016(平成28)年に引退しています。
この「パノラマエクスプレスアルプス」ですが、JR東日本が発足してから4か月ほどが経過した1987年8月25日に「山手線」も走行。現在の湘南新宿ラインや埼京線が走る山手貨物線ではなく、グルっと一周する旅客線の山手線です。
これは、日本テレビのクイズ番組を車内で収録するために団体臨時列車として運転されたもので、大崎から大崎まで山手線内回りを一周しています。
しかし「パノラマエクスプレスアルプス」は保安装置にATS(Automatic Train Stop/自動列車停止装置)のみを搭載していたため、そのままではATC(Automatic Train Control/自動列車制御装置)を採用している山手線を走ることはできません。
そこで登場したのが、山手電車区(現・東京総合車両センター)に所属していたクモヤ143形です。クモヤ143形はATCに対応したけん引車で、山手線を走ることができます。
そのため、列車は「パノラマエクスプレスアルプス」の先頭にクモヤ143形を連結して運転。まるで車両工場に運ばれるかのようで、「パノラマエクスプレスアルプス」の先頭からは展望できないという、ちょっと変わった編成でした。
【了】
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