埼京線を走った初代「成田エクスプレス」253系 なぜ入線? 目撃者も僅少なワケ
初代「成田エクスプレス」の253系電車が、埼京線を走ったことがあります。埼京線といっても池袋以南ではなく、ふだん成田エクスプレスが走ることのない池袋~大宮間です。写真もほぼないのでは、というレア運行を振り返ります。
「試験」で入線 当時のJRの事情
1991(平成3)年3月19日に特急「成田エクスプレス」として営業運転を開始した253系電車。後継車両のE259系の登場により2010(平成22)年6月30日で「成田エクスプレス」の定期運行を終了し、2022年で12年を迎えます。
253系は「成田エクスプレス」で営業運転開始を前に各種試運転を行っていますが、その最たるものが埼京線での試運転といえます。埼京線といっても池袋以南の山手貨物線ではなく、戸田公園駅や浮間舟渡駅を通る池袋~大宮間です。
1991年7月刊行の専門誌『電車(430)』(交友社・編)に掲載のJR東日本執筆記事によると、試運転は1991年2月18日から3月4日までのうち8日間で実施。253系第2編成(3両)を使用して埼京線赤羽~大宮間の下り線で最高運転速度160km/hの高速走行試験を行ったとのことです。253系は大船電車区(現・鎌倉総合車両センター)から回送で赤羽へ向かい、赤羽~大宮間を3往復して池袋へと回送。池袋~板橋間にある池袋運転区(現・池袋運輸区)に入り、以降は池袋運転区をベースとして同様の試運転を行いました。
当時、常磐線で特急「スーパーひたち」が130km/h営業運転、津軽海峡線で特急「はつかり」が140km/hの営業運転行っていましたが、JR東日本では160km/hの営業運転を目標としていました。しかし、一般の電車は非常ブレーキをかけてから600m以内に停止しなくてはいけないため、埼京線での試運転では、試作した新たなブレーキ装置を搭載して非常ブレーキ性能試験や160km/hでの走行安定性、地上での騒音を測定しました。
253系の特急「成田エクスプレス」は大宮発着でも運転されたことがありますが、その運転経路は山手貨物線・東北貨物線(湘南新宿ライン)のルート。埼京線池袋~大宮間の入線は、後にも先にも、この高速走行試験時だけでした。
ただ、試運転は埼京線の終電後から初電前にかけて行われ、途中駅はすべて通過。駅構内に入ることもできなかったことから、試運転シーンを捉えた写真はほとんどないと思われます。
【了】
今のJR埼京線の内、赤羽−武蔵浦和−大宮間は、東北・上越新幹線を通す為の見返りと言う、『通勤5方面作戦』の一つと思います。