パレード専用? ロシア最新鋭戦車「T-14」がウクライナ戦に出ないワケ 「切り札」の可能性

2022年5月9日、モスクワで対ドイツ戦勝記念パレードが行われました。プーチン大統領の演説に注目が集まるなか、ロシアが誇る最新戦車も登場。しかし同車はウクライナ侵攻には用いられていません。その理由を推察します。

T-14を投入しても戦局挽回しなかったときは…

 しかし、まだ他にも考えられる理由があります。それは、T-14が温存されている可能性です。プルーフィングは終わっており、絶対数も多いわけではないものの相応の規模の戦闘単位を編成するだけの頭数は揃っている。しかし最新鋭の「虎の子」であるがゆえ、「ここ一番」という局面に投入すべく控え置かれているということも、あり得るのではないでしょうか。

 では、「ここ一番」とはなにか。それは、勝利を目前にした決定的な時期に投入して、かつてのT-34戦車のように、T-14を「勝利の戦車」と印象付けることが考えられます。そうすれば、副次的にはロシアにとっての重要な外貨獲得ビジネスのひとつである兵器輸出の一環として、同車の輸出にもはずみがつくことでしょう。

Large 20220510 01
2022年5月9日にモスクワで行われた対ドイツ戦勝記念日の軍事パレードで赤の広場を走るT-34-85戦車。すでに退役して久しいが、第2次大戦の勝利の象徴として例年、軍事パレードで行進している(画像:ロシア大統領府)。

 ただ、それとは別に、負けが込んだロシアが戦局の挽回を迫られた際、「ひとつ前のカード」的に実戦へ投入される可能性も、決して考えられないことではありません。たとえば、優秀な戦車との交戦も想定されるアメリカやNATO(北大西洋条約機構)の介入という事態にでもなれば、T-14はぜひ欲しいところでしょう。

 そして万一、もしT-14の実戦投入がロシアにとって「ひとつ前のカード」であるとするなら、このカードが奏功しなかった場合、かねてよりプーチン大統領がちらつかせている、恐るべき「最後の切札」、すなわち核攻撃、戦術核兵器の使用を決断する可能性もなきにしもあらずかもしれません。

 ロシアが誇る最新鋭戦車T-14が戦場に姿を現す日が来るのか、その動向をこれからも注視していきたいと筆者(白石 光:戦史研究家)は考えています。

【了】

【T-14の俯瞰写真も】モスクワ軍事パレードで行進するロシア軍戦車

ロシア軍のウクライナ侵攻 最新情勢 戦争はどうなっているのか

Writer:

東京・御茶ノ水生まれ。陸・海・空すべての兵器や戦史を研究しており『PANZER』、『世界の艦船』、『ミリタリークラシックス』、『歴史群像』など軍事雑誌各誌の定期連載を持つほか著書多数。また各種軍事関連映画の公式プログラムへの執筆も数多く手掛ける。『第二次世界大戦映画DVDコレクション』総監修者。かつて観賞魚雑誌編集長や観賞魚専門学院校長も務め、その方面の著書も多数。

最新記事

コメント

記事ランキング

  1. ロシア軍の戦闘機が「真正面から撃破される瞬間」を捉えた映像が公開 ドローンの突入を防げず
  2. 片山さつき大臣「実態調査はじめます」 街のクルマ屋の「保険代理店打ち切り」問題に新局面 ビッグモーター事件の余波に再び切り込む!
  3. 海自の潜水艦が発射した魚雷が「揚陸艦へ突進」 雷跡を上空から捉えた珍しい写真が公開される
  4. 「海自最大の護衛艦」と「世界最大級の軍艦」が洋上で並んだ! 圧巻の編隊航行を上空から捉えたショットが公開
  5. 海自艦がロシア海軍の「超静かな潜水艦」を確認!浮上航行する姿を捉えた画像を防衛省が公開
  1. 家族が「SSSS航空券」を引き当ててしまった…! 乗る前から“異変” 保安検査員も「Oh…」 誰でも起こり得る“緊迫の一部始終”
  2. ETCの手前で「ガシャン!」高速入口に吊るされた「黄色い鎖」の正体は? 傷つく覚悟で“あえてぶつける”超アナログな理由
  3. ロシア軍の爆撃機が「真っ逆さまに墜落」 地上に激突する瞬間を捉えた映像が公開 “巨大な黒煙”が立ち上る
  4. 航行中の護衛艦「かが」の周辺に「巨大な海洋生物」が出現! 艦艇勤務ならではの光景を海自公式が公開
  5. ロシア軍の戦闘機が「真正面から撃破される瞬間」を捉えた映像が公開 ドローンの突入を防げず