パレード専用? ロシア最新鋭戦車「T-14」がウクライナ戦に出ないワケ 「切り札」の可能性
T-14を投入しても戦局挽回しなかったときは…
しかし、まだ他にも考えられる理由があります。それは、T-14が温存されている可能性です。プルーフィングは終わっており、絶対数も多いわけではないものの相応の規模の戦闘単位を編成するだけの頭数は揃っている。しかし最新鋭の「虎の子」であるがゆえ、「ここ一番」という局面に投入すべく控え置かれているということも、あり得るのではないでしょうか。
では、「ここ一番」とはなにか。それは、勝利を目前にした決定的な時期に投入して、かつてのT-34戦車のように、T-14を「勝利の戦車」と印象付けることが考えられます。そうすれば、副次的にはロシアにとっての重要な外貨獲得ビジネスのひとつである兵器輸出の一環として、同車の輸出にもはずみがつくことでしょう。
ただ、それとは別に、負けが込んだロシアが戦局の挽回を迫られた際、「ひとつ前のカード」的に実戦へ投入される可能性も、決して考えられないことではありません。たとえば、優秀な戦車との交戦も想定されるアメリカやNATO(北大西洋条約機構)の介入という事態にでもなれば、T-14はぜひ欲しいところでしょう。
そして万一、もしT-14の実戦投入がロシアにとって「ひとつ前のカード」であるとするなら、このカードが奏功しなかった場合、かねてよりプーチン大統領がちらつかせている、恐るべき「最後の切札」、すなわち核攻撃、戦術核兵器の使用を決断する可能性もなきにしもあらずかもしれません。
ロシアが誇る最新鋭戦車T-14が戦場に姿を現す日が来るのか、その動向をこれからも注視していきたいと筆者(白石 光:戦史研究家)は考えています。
【了】
Writer: 白石 光(戦史研究家)
東京・御茶ノ水生まれ。陸・海・空すべての兵器や戦史を研究しており『PANZER』、『世界の艦船』、『ミリタリークラシックス』、『歴史群像』など軍事雑誌各誌の定期連載を持つほか著書多数。また各種軍事関連映画の公式プログラムへの執筆も数多く手掛ける。『第二次世界大戦映画DVDコレクション』総監修者。かつて観賞魚雑誌編集長や観賞魚専門学院校長も務め、その方面の著書も多数。
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