JR関西本線「亀山~加茂」なぜ凋落したのか 名古屋~奈良の最短ルート かつては特急も

ライバルに敗北、近代化の遅れ、そして…

 さらに、全国のローカル線と同様、モータリゼーションの影響を受けます。1965(昭和40)年に亀山市~天理市間で一般国道ながら自動車専用道路の名阪国道が開通。国産自動車の性能の進歩、大衆への普及もあって、地域交通手段としても関西本線の役目は小さくなっていきました。このように、通勤路線として強化した大和路線とは対照的に、亀山~加茂間は近代化から取り残され、閑散としたローカル線になってしまったのです。運行系統も関西本線の両端区間と分かれ、独立しています。

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谷を巡る車窓が続く。風が心地良く、トロッコ列車が似合いそう(杉山淳一撮影)。

 沿線人口の低下も利用者減少の理由のひとつでしょう。三重県亀山市は2010(平成22)年から人口減少が始まり、三重県伊賀市も1998(平成10)年から、京都府南山城村は1995(平成7)年から減少に転じています。京都市笠置町は1947(昭和22)年から人口が減り、現在は半分以下です。唯一、京都府木津川市は人口増加が続いています。これは京都・奈良・大阪都市圏のベッドタウンとして成長しているからですが、亀山~加茂間の利用には結びつきにくいと考えられます。

 人口減少は輸送密度に影響します。亀山~加茂間の輸送密度は1987(昭和62)年に4294人/日でした。しかし2020年は722人/日です。前出の2019年度の1090人/日からさらに減りました。1987年の約6分の1です。

 亀山~加茂間が今後、鉄道として存続するのか、あるいは他の交通手段に転換されるのか。それは今後のJR西日本と沿線自治体との協議次第です。鉄道ファンとしては、なんとか鉄道を残してほしいと思います。沿線には「忍者の里」伊賀上野があります。車窓は加太川、柘植川に沿う谷が続きます。トロッコ列車に揺られ、風に吹かれたら楽しいだろうな、と思う路線です。存続の検討材料として、伊賀忍者とトロッコをテーマとした観光列車を走らせられないものか……と、つい妄想してしまいました。

【了】

※駅名を修正しました(5月18日16時25分)。

【え、走ってたの】関西本線最後の急行「かすが」に使われた車両

Writer: 杉山淳一(鉄道ライター)

乗り鉄。書き鉄。ゲーム鉄。某出版社でゲーム雑誌の広告営業職を経て独立。PCカタログ制作、PC関連雑誌デスクを経験したのち、ネットメディアなどで鉄道関係のニュース、コラムを執筆。国内の鉄道路線踏破率は93パーセント。著書に『ぼくは乗り鉄、おでかけ日和。日本全国列車旅、達人のとっておき33選』(幻冬舎刊)など。

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コメント

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4件のコメント

  1. 亀山〜加茂は川や小渓谷がありトロッコ列車の案は賛成、また東海道本線が何かでトラブルで有事の際はバイパスとして必ず残しておく必要性を強く感じます。

    • 東海道線、近鉄線がすでにあり、大阪~名古屋間は高速道路も何本もあるので、有事の際にこの路線を使うことはないと思います。
      少なくとも単線非電化なので東海道線の重要を満たせません。

  2. ここは JR が東海道線(あるいは東海道新幹線)の利用を促すために
    敢えて今まで塩漬け状態にして放置していたように見える。
    (沿線より)はなれた遠方地からだとそう見える。
    ここが元の私鉄会社のままなりJRと別会社であったら、
    現在の近鉄ほどではないにしろ、もっと活況な路線になっていたのではないかと容易に察せる-。

    • 私鉄のままなら活況が容易に察せる…
      想像力が逞しい…

      東海道 東海道新幹線に旅客誘導のため塩漬け…
      JR以後なら東海と西日本
      西日本が放置する理由にならない
      国鉄時代なら やはり勾配の存在 が東海道本線に比して不利に働き主要ルートから外されたのだろう
      そうしているうちに新幹線ができてしまえば
      もはや再浮上のきっかけすら無くなった