ソ連が欲しがった? 旧日本海軍の秘密兵器「潜水空母」伊400型 戦後アメリカが沈めたワケ

山本五十六の発案により、米本土を攻撃する目的で開発が始まった潜水空母「伊400型」。戦果を挙げることなく終わり、戦後ハワイで処分された潜水空母を、戦後の米英ソら連合国はどう捉えていたのか、改めて史実を紐ときます。

アメリカ軍が潜水空母を処分した本当の理由

 戦後、アメリカは潜水空母に興味を持った旧ソ連(現ロシア)が、その引き渡しを要求したため急いで処分したという話があります。しかし、歴史の時系列を改めて見ていくと、実際はかなり事情が違ったことがわかります。

 ヨーロッパでは1945(昭和20)年5月にドイツが降伏し、Uボートの取り扱いが検討されていました。日本では1946(昭和21)年2月にアメリカ海軍の技術調査が終わり、日本の潜水艦をどうするか議論する、アメリカ海軍の潜水艦士官会議が3月26日に最終処分を決定。これを受けて、アメリカ太平洋艦隊は日本本土に残る潜水艦と合わせて、調査のためハワイに回航していた前出の6隻を4月1日から6月4日にかけて沈めたのです。

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旧日本海軍の「伊14」の艦橋部(画像:アメリカ海軍)。

 1945(昭和20)年2月のヤルタ会談で、当時のルーズベルト米国大統領は、ソ連の対日参戦と引き換えにスターリン書記長が要求した千島・南樺太の占領を認めています。

 しかし、ルーズベルトの後任となったトルーマン大統領は、同年7月のポツダム会談において、ソ連を排除し米英中(中華民国)でポツダム宣言を出しています。すでに冷戦が始まっていました。アメリカは日本の分割統治を求めるソ連の要求を拒否し、イギリス(豪州ら英連邦諸国含む)を加えた米英だけで日本占領を行うことを決めたのです。

 つまり、すでに旧ソ連が日本艦艇に手出しする余地はなかったといえるでしょう。なお、アメリカは伊400型を始めとした潜水空母の調査を終えても、それが攻撃用という認識は持っていませんでした。旧ソ連も潜水空母の詳細を知る余地がありませんでした。

 旧日本軍に関しては、伊400型潜水艦に関するハナシに限らず、時系列と因果関係が混乱した、このような“都市伝説的”な逸話がほかにも根強く残っています。

 台湾に賠償艦として引き渡された駆逐艦「雪風」など、戦後も現役で生き延びた艦艇はありましたが、潜水艦は全て前出のように、調査が終わったのち連合国の決定を受けて処分しただけで、旧ソ連を意識したわけでは決してなかったというのが事実だといえるでしょう。

【了】

【写真】アメリカ海軍が調査した「伊14」の内部

Writer:

軍事雑誌や書籍の編集。日本海軍、欧米海軍の艦艇や軍用機、戦史の記事を執筆するとともに、ニュートン・ミリタリーシリーズで、アメリカ空軍戦闘機。F-22ラプター、F-35ライトニングⅡの翻訳本がある。

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コメント

1件のコメント

  1. 広告が邪魔で大変読みにくい。記事内容が良いのに、あまり訪れたいとは思わなくなります。

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