リアル合体/変身メカ「ボクサー」装甲車の装軌型ついに爆誕! その実際のところは?
「ボクサー」は実際どのように使われているの?
実際のところ、ボクサーの変身パーツであるミッションモジュールは、どのくらいのバリエーションが用意されているのでしょうか。
各国の軍に採用されているもので見てみると、歩兵戦闘車、兵員輸送車、偵察車、砲兵観測車、通信指揮車、装甲救急車、戦闘工兵車、輸送車、回収車、修理支援車、多用途車となっています。ほかにも155mm自走榴弾砲(RCH155)、自走多連装ロケット、砲兵観測車、自走迫撃砲、弾薬運搬車、近距離対空システム(スカイレンジャー)、架橋車などをラインアップしており、顧客ニーズに応じてバリエーションはさらに広げられるといいます。もっとも、やたらバリエーションを紹介するのはメーカーのセールス手法でもあり、実用性があるかは別問題です。
ミッションモジュールは車体と4か所のポイントで固定され、野外でも交換は1時間以内で可能とされています。ただ、実際に「ボクサー」を採用または採用を決めた国が6か国あるなかで、使われたミッションモジュールは歩兵戦闘車や兵員輸送車、指揮通信車、救急車などオーソドックスなものにとどまり、そして特段「変身」できることが採用決定のポイントになったような話も聞こえてきません。ドイツ陸軍では、実際の運用において変身させなければならないような局面はほとんど無いともいわれています。
とはいえ、ロシアによるウクライナ侵攻に見られるような対ドローン戦や電子戦といった、地上部隊が担う任務の新たな領域は今後も広がっていくでしょうから、ミッションモジュールもそのラインアップはさらに拡充していくことでしょう。
「ボクサー」を実際に変身させるには短時間で済むとはいえ、機材や人員が必要で手間もかかるので、どこでも頻繁に行えるものでもありません。アニメや特撮のように、場面に応じてすぐ変身とはいかないのは、少々、男の子の夢とは違うようですが、予測のつきにくい変化をする将来の戦場環境にもミッションモジュール交換で変身、進化して対応できるという“サスティナビリティ(持続可能性)“に優れた装甲車は、陸軍の夢です。
【了】
Writer: 月刊PANZER編集部
1975(昭和50)年に創刊した、40年以上の実績を誇る老舗軍事雑誌(http://www.argo-ec.com/)。戦車雑誌として各種戦闘車両の写真・情報ストックを所有し様々な報道機関への提供も行っている。また陸にこだわらず陸海空のあらゆるミリタリー系の資料提供、監修も行っており、玩具やTVアニメ、ゲームなど幅広い分野で実績あり。
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