装甲車の足まわり 混ぜるな危険! だった「タイヤ」と「履帯」が昨今そうでもないワケ
従来、装甲車はその足まわりがタイヤか履帯(いわゆるキャタピラ)かでまったく別物として扱われ、別々に運用するのが一般的でしたが、イギリスではこれらの混成編制が企図されています。それを可能とする背景を解説します。
タイヤ付きは「戦車」とはいわない?
子どもが戦車の絵を描くと必ず履帯(いわゆるキャタピラ)を描くように、履帯は広く一般的にも、戦車の必須条件のように見なされています。一方、タイヤを装備する陸上自衛隊の16式機動戦闘車は、戦車とは呼ばれません。
このように、履帯で走る車両は「装軌車」、タイヤで走る車両は「装輪車」と呼ばれ、従来、両者はまったく別物として扱われてきました。単純に優劣比較もできるものではなく、装軌か履帯かというテーマは議論が尽きないネタだったのですが、最近では「まったく別物」と断言できないような傾向が見られます。
1992(平成4)年7月に発効した「CFE」こと「欧州通常戦力条約」では、「戦車は、空車重量が16.5t以上で、口径75mm以上の360度旋回砲を装備する装軌式装甲戦闘車両。今後就役する装輪式装甲戦闘車両で、右の他の全ての基準を満たすものも戦車と見なされる」と定義されています。つまりCFEでは1992年7月以降、戦車の要件に装軌、装輪の違いは関係ないことになっています。
装軌車と装輪車の違いははっきりしていますので、両者を同じ編制にすることは使い勝手が悪く避けられてきました。アメリカ陸軍には緊急展開能力を重視したストライカー旅団戦闘団という部隊がありますが、その名の通り装輪の「ストライカー」装甲車で基本統一されています。
また、主力戦車を援護する歩兵戦闘車という装甲車があります。歩兵を載せて戦車と協同行動し、敵の携帯対戦車火器などを排除して戦車を援護するのが役割で、戦車に随伴するため足回りは装軌式が普通でした。
しかし最近は傾向が変わってきて、装軌車と装輪車を同じ編制に組み込む動きがみられるようになりました。装軌車と装輪車の走破性能の差が少なくなってきたという技術進歩もひとつですが、それ以外にも理由があります。
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