世界初「EVタンカー」の衝撃 フェリーなど新船も続々 環境対応だけでない“革命”とは

老いる船、乗組員、業界…EV船が解決する複数の課題

 高い性能を持つ「あさひ」ですが、EVタンカーの船価は従来船型と比べて1.2倍から1.5倍ほど高くなっています。旭タンカーでEV船プロジェクトリーダーを務める澤田 真さんはEV船導入の目的について、「メインはCO2削減と乗組員の働き方改革」と強調します。

 内航海運は、国内貨物の44%、石油など産業基礎物資の約8割を運ぶ重要なインフラです。石油製品の輸送量は減少傾向が続いているものの、近年ではトラックのドライバー不足などを補う輸送手段として注目され、雑貨貨物の輸送量が伸びています。

 しかし、船員の高齢化が進行し、内航海運では50歳以上の船員が50%以上を占めます。船そのものも同様で、法定耐用年数(14年)を超えた船舶の割合も7割と高齢化が深刻な状況です。加えて、政府が掲げた2050年カーボンニュートラルを実現するため、GHG(温室効果ガス)のさらなる削減が業界全体に求められています。

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「あさひ」のブリッジ。レーダーや無線機、操船用のジョイスティックなどを集約配置(深水千翔撮影)。

 こうした課題を解決するには、若手船員が働ける魅力的な職場環境を整えつつ、環境に配慮した新しい船舶を導入していく必要があります。

「カーボンニュートラルに向けた舶用燃料として水素やアンモニアが注目されているが、小型船の内航船で同じように使えるかというと難しい。バッテリーを活用し、船自体をオール電化にすることでCO2削減につながり、居住性の向上など乗組員の課題解決につながる。『あさひ』は良いモデルケースになったと思う」(旭タンカー 澤田さん)。

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