「急に電気が消える電車」が関門トンネルに残るワケ 他で消えなくなった理由

他では見られなくなった「電気が消える」

 門司駅から関門トンネルの入り口の方を見ると「交直転換」と書かれた標識や、紅白の架線死区間標識を確認できます。駅の先端にも「直注意」「ここで転換」と乗務員への注意を促す表示が掲げられています。

 ところで「交流」と「直流」の切り替えが行われる路線は、常磐線の取手~藤代間や七尾線の中津幡~津幡など各地に存在しますが、それらはE531系や521系といったJR化後に製造された新しい車両が使われており、デッドセクションの通過時に電車が消灯することは基本的になくなっているのです。

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下関駅。右はJR西日本の115系電車(深水千翔撮影)。

 一方、関門区間で使用されている415系は、国鉄時代の1971(昭和46)年に製造が始まった交直両用の近郊型電車。古い設計ということもあって、デッドセクションを通って交直切り替えを行う時は編成全体が停電状態となります。筆者が2022年6月25日に乗車したFo111編成のように、1978(昭和53)年に製造された40年選手も活躍中です。

 415系は老朽化が進んでいることから、九州の交流区間では821系の導入に伴って、廃車も発生していますが、JR九州が保有する唯一の交直両用電車でもあるため、関門海峡においては両岸を結ぶ大事な役割を担っています。新型の交直両用電車の話も今のところはなく、すぐに全車が引退するという情勢ではありません。しばらくは走行中の電車の照明が消える日常を見ることができそうです。

 なお首都圏では、たとえばJR・東武の直通列車が両社の境となる栗橋駅で電気が消えますが、これは直流と直流のデッドセクションです。

【了】

【萌え~】なんだか物々しい「デッドセクション」 写真で見る

Writer: 深水千翔(海事ライター)

1988年生まれ。大学卒業後、防衛専門紙を経て日本海事新聞社の記者として造船所や舶用メーカー、防衛関連の取材を担当。現在はフリーランスの記者として活動中。

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