日本も飛行OKに 軽量スポーツ機「LSA」の課題 国の通達ほぼ形だけ? “後進国”抜け出せず

空飛ぶタクシーやドローンよりも航空産業に寄与しそうなLSA

 特に北米2か国(アメリカ・カナダ)とヨーロッパ、ブラジルはこの動きに熱心で、広範囲かつ深いレベルで航空法の標準化を進めています。エンブラエル製の新型旅客機がアメリカ、ヨーロッパ、ブラジルの型式証明をほぼ同時に取得できるのも、こうした法制度の拡充ぶりが後押ししているといえるでしょう。

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中国製の軽量スポーツ機(LSA)である「Sky Trek」。完成機としてFAAの認証を取得しており、欧米にも輸出されている(細谷泰正撮影)。

 開発遅延が繰り返され、最終的に立ち消え同然になったMSJの失敗を鑑みると、その要因にはBASAを軽視してきた航空当局の姿勢もあったと考えます。今回のLSAの状況をみても通達の内容はBASA不履行と言われても弁解の余地はなく、当局の姿勢は変わっていないように思えます。

 ならば、日本が航空先進国に返り咲くにはどうしたらよいか。それには航空人口の増加とルール・メーキングの可視化がどうしても必要でしょう。航空先進国においては航空法の改訂に際して、その都度新しいルール・メーキング委員会が組織され、議論、検討、改定案の作成が行われます。メンバーの人選や会議の内容もすべて公開です。

 わが国には多くの島々があり、活用されていない地方空港が多く存在しています。LSAの普及により地方や離島の経済活性化などメリットは計り知れません。また、産業政策として新たな航空事業の育成や航空運送業の国際競争力強化の面からもLSAを実用機として普及させることが必要です。

 空飛ぶタクシーの実用化やドローンの活用というのをアドバルーンとして掲げるのも良いですが、そもそもこういう足元の部分の整備が肝要ではないかと考えます。そういった点からも、一日も早い抜本的な法改正が実行されることを期待します。

【了】

【エミレーツ航空の訓練機も】多種多様! バラエティに富む軽量スポーツ機たち

Writer: 細谷泰正(航空評論家/元AOPA JAPAN理事)

航空評論家、各国の航空行政、航空機研究が専門。日本オーナーパイロット協会(AOPA-JAPAN)元理事

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コメント

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3件のコメント

  1. 人口密度による飛行禁止エリアの設定が必要かと
    人のいないエリアの広大な米加と同じには不可
    逆に飛行エリアの芸邸の方が楽か

  2. いつのまにか日本は航空機を作ると言うカルチャーがなくなってしまったんでしょうか。
    日本では大企業であるXX重工と言う会社でしか航空機を製作されていないので、いつのまにか、航空機の製作は大企業であると言う文化になってしまいました。ヨーロッパやアメリカでは20名そこそこの会社で航空機を作っています。
    そのような航空機を0から作るカルチャーを持つ国と、翻訳行政に徹している日本では根本から異なっていると思います。
    そこをなんとか打破したいのですが、、、、

  3. というか、機体重量僅か600kg,塔乗員せいぜい二人くらいのウルトラライトよりはマシってレベルの飛行機の持つ実用性って何よ。ペイロードもほとんど無さそうだし、せいぜい金持ちの玩具止まりなんじゃ?タイヤ4つ付いててもバイクと同程度の実用性しかないホンダのS660みたいなもんでしょ。しかも免許取得が簡単てことはレベルの低いパイロットが量産される可能性もあるわけで、これで事故でも多発したら政府は金持ちの玩具を優遇して国民を危険に晒したとか手のひらクルーするんじゃないの?