なぜタイに?「九九式高等練習機」保存機 戦前の大量生産機 日本じゃ1機も現存せず
手がかからない! 重宝されたであろう九九式高等練習機
九九式高等練習機はベース機の九八式直協機と同様、機首部に7.7mm機銃を装備していますが、タイ空軍の九九式高等練習機は戦闘に使用された記録はなく、パイロットの教育のみに使用されていたようです。また九八式直協機と同様、低速飛行時に急な引き起こしをすると失速しやすいという難点はあったものの、それ以外の操縦性や安定性は極めて良好でした。
このほか、九八式直協機は設備の整わない環境での運用を想定して、出来る限り整備を容易にするよう設計されており、九九式高等練習機も同様に重宝されたのではないでしょうか。
筆者はタイ空軍の九九式高等練習機に対する評価の記録を見つけることはできませんでしたが、安定性、操縦性、整備性に優れた同機はタイ空軍でも概ね好評だったのではないかと思いますし、同機が1951(昭和26)年まで運用されたという事実が、それを裏づけているように思えます。
ただ1386機が製造されたにもかかわらず、2022年9月の時点で現存している九九式高等練習機はタイ王国空軍博物館の収蔵機と、中国・北京の中国人民革命軍事博物館の収蔵機の2機だけです。
写真で見る限り、中国人民革命軍事博物館の収蔵機は屋外展示されているようですが、タイ王国空軍博物館の収蔵機は現在、空調の効いた屋内施設で展示されており、かなり良好なコンディションであるように見受けられました。
日本の産業遺産の一つである九九式高等練習機が日本国内に無いのは寂しい事ですが、大切に保管されているタイ王国空軍博物館の収蔵機の姿を目のあたりにして、軍事・航空博物館の少ない日本で保管されるより、幸せなのではないかという気持ちになりました。
【了】
Writer: 竹内 修(軍事ジャーナリスト)
軍事ジャーナリスト。海外の防衛装備展示会やメーカーなどへの取材に基づいた記事を、軍事専門誌のほか一般誌でも執筆。著書は「最先端未来兵器完全ファイル」、「軍用ドローン年鑑」、「全161か国 これが世界の陸軍力だ!」など。
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