デカすぎて困る? 海上自衛隊「イージス・システム搭載艦」の“ドックどうすんの”問題
日本海側で受け入れ可能なドックがない!
三菱重工は艦艇事業に関して新造を長崎造船所で、修繕を横浜製作所で行うという方針を示していますが、艦艇の配備地や修繕を担う作業員のスケジュールによっては、入渠先を柔軟に変えることがあります。長崎造船所の第2号ドックは長さ350m、幅56mと余裕があるため、こちらで修繕するという可能性もあるかもしれません。
このほか、名村造船所グループの佐世保重工業と函館どつくが大型艦船の入渠に対応した設備を持っていますが、機密の塊である「イージス・システム搭載艦」の修繕ができるかというと難しいところがあります。
なお、「イージス・システム搭載艦」の課題として、日本海側で受け入れ可能なドックがないことが上げられます。先に書いたようにJMU舞鶴事業所の2号ドック(長さ258m、幅36.40m)と3号ドック(長さ245.6m、幅35.80m)へは入渠することができないため、BMD(弾道ミサイル防衛)任務で日本海へ展開して不測の事態が発生した場合は、太平洋側に回航して横浜地区のドックに入るか、九州の長崎へ向かうしかありません。
日本の造船業は中国や韓国との厳しい競争に晒され、経営的にも人員的にも十分な体力があるとは言えない状況です。艦艇の大型化が進む一方で、運用を支える基盤をどのように支えていくかが、今後の課題となりそうです。
【了】
Writer: 深水千翔(海事ライター)
1988年生まれ。大学卒業後、防衛専門紙を経て日本海事新聞社の記者として造船所や舶用メーカー、防衛関連の取材を担当。現在はフリーランスの記者として活動中。
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