閉まっていたらむしろレア! 東京“鉄道の街”ならではの単線踏切 通過列車も珍しい
東京都内の車両基地や鉄道関連施設が集まる“鉄道の街”に、公道を横切る単線の踏切があります。閉まったときのほうがむしろレアな部類。どのような車両が通るのでしょうか。
お召車両が通るかも!?
都市部には「開かずの踏切」のように、遮断時間が長すぎて対策が講じられる踏切がある一方、遮断する様子を滅多に見られず、「足止めされたらむしろレア」ともいえる踏切があります。そのひとつ、東京都北区にあるJR線の踏切を訪れました。
踏切の名称は「王子街道南亘り踏切」。その名の通り王子街道を横切るように単線が通っています。ここはJR山手線の田端駅および東北本線の尾久駅に近く、周囲にはJR東日本の東京支社が所在しているほか、田端運転所や田端信号場、尾久車両センターなどの鉄道施設もあります。在来線だけではなく東京新幹線車両センターもあり、踏切に立つと、まるで車両基地の中に来たようです。
先述の通り田端駅と尾久駅は別々の路線上にあるため、両駅をダイレクトにつなぐ列車はありません。しかし、それはあくまでも旅客の話。田端運転所や尾久車両センターなどは1本の渡り線で結ばれており、それがまさに王子街道を横切っているわけです。ちなみに踏切名を記した標識には「東北回送線」とあります。
ここを通過する列車は主に回送される機関車です。回送列車は時刻表に記載されず、また運転回数も少ないので、渡り線、そして踏切を通過する列車を目にする機会は滅多にありません。運が良ければ、尾久車両センターに所属するお召列車E655系電車や、クルーズトレイン「TRAIN SUITE 四季島」のE001形なども見られるかもしれません。
地元の東田端まちづくり協議会は、お祭りなどの際、渡り線に列車を走らせるといったことも模索していたようです。しかし公道を横切るという事情から、実現には至っていません。ただ鉄道に囲まれた環境を活かすべく、同協議会は周辺の公園や歩道などに信号機類や車輪、新幹線のカットモデルなどを展示し、周辺が鉄道の街であることをアピールしています。
【了】
Writer: 小川裕夫(フリーランスライター・カメラマン)
フリーランスライター・カメラマン。1977年、静岡市生まれ。行政誌編集者を経てフリーに。官邸で実施される首相会見には、唯一のフリーランスカメラマンとしても参加。著書『踏切天国』(秀和システム)、『渋沢栄一と鉄道』(天夢人)、『東京王』(ぶんか社)、『私鉄特急の謎』(イースト新書Q)など。
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