細かすぎ? 高速バス「愛称」の分かりづらさ 淘汰の動きも “昭和ネーム”じゃ負ける

“昭和”なままのバス愛称じゃダメ!

 困ったのがJR系以外の事業者です。ここ10数年で、夜行路線の乗客の属性や予約方法が変化しています。従来は、「列車より早く朝イチに東京、大阪に着きたい」といった出張利用が少なくなかったのですが、新幹線網の拡充でそのような需要は減り、若年層の比率が上がっています。

 かつて大都市間に特化していた高速ツアーバス各社も、制度改正により高速乗合バスに転換し、地方向けの夜行路線にも進出しました。スマホ上でバスを比較しながら予約する環境となった今、旧国名や地元の特産物を名乗る「昭和」な路線愛称では、カタカナのブランド名を掲げ、ウェブサイトから車両まで統一されたデザインの新興事業者に負けてしまうのです。

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JRのグランドリーム車両。ドリーム号のブランド強化を図っている(乗りものニュース編集部撮影)。

 冒頭の弘南バスは、もともと自社単独での首都圏路線新設に積極的で、前出の通り青森から首都圏へ夜行6往復、昼行1往復(昼行は運休中)という事業規模があります。唯一、共同運行だったフラッグシップ路線「ノクターン号」から京浜急行バスが撤退したことで、とうとう、全便が単独運行となりました。これを機に、青森県在住の、あるいは青森県出身の人々に浸透している「ノクターン号」「パンダ号」に名称を統一することができました。

 たとえヨコ文字の会社が増えても、地元に根を張り、高校時代には路線バスで通学していた人も多い地元の老舗事業者に、地域住民らは一定の信頼感を持っています。路線別の愛称で拡散気味だった各路線のイメージを集約し、弘南バスの存在感を前面に出すのです。かつて、南海が「サザンクロス」で、東急が「ミルキーウェイ」で目指した戦略を思い起こさせます。

 今後、夜行路線のほとんどを占める2社以上の共同運行路線が、路線愛称を「ブランド」に昇華していくことができるか、興味は尽きません。

【了】

【超豪華!】たった12席の夜行バス “ブランド戦略”もバッチリ

Writer: 成定竜一(高速バスマーケティング研究所代表)

1972年兵庫県生まれ。早大商卒。楽天バスサービス取締役などを経て2011年、高速バスマーケティング研究所設立。全国のバス会社にコンサルティングを実施。国土交通省「バス事業のあり方検討会」委員など歴任。新聞、テレビなどでコメント多数。

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コメント

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1件のコメント

  1. >高速バスマーケティング研究所

    何それ、知らねー。
    研究所にしたら、内容が薄っぺらい感じがしました。