“空飛ぶ円盤” アメリカの珍機「V-173」初飛行 - 1942.11.23 UFOと間違えてもしょうがない?
実質ゼロ距離離陸が可能な性能を記録
V-173は円盤翼の概念を実証するための試験機であり、その機体構造は簡易的で創意工夫を積み重ねたような感じでした。機体の大部分は木材で作られ、外面部は綿布を使った布張りでした。エンジンも出力わずか80馬力のコンチネンタルA80空冷エンジンで、それを2基搭載。しかも、電動スターターがないため、木製グリップを使って手動で始動させる必要がありました。
ただ、プロペラは小さなエンジンには不釣り合いなほど大きなもので、3枚あるプロペラブレードの長さは約5mもあります。加えて地上滑走ではその大型プロペラが地面に接触しないよう長い前脚が備えられており、地上では機体全体が上向きに22度も傾いて駐機するスタイルでした。そのため、離着陸時はコックピット全体が上を向いてしまい前方や下方がほとんど見えなくなってしまうので、床の一部が覗き窓仕様になっています。
試験は東海岸北部のコネティカット州ブリッジポート空港(現シコルスキー記念空港)で行われましたが、円盤翼という特殊な形状の機体だったため、その試験は順調なものではありませんでした。着陸が困難なことから昇降舵が再設計され、尾翼には安定性を高めるためのフラップが追加されます。また、胴体内部のエンジンからプロペラに動力を伝えるギアとドライブシャフトに問題があったため、それによる異常振動の影響によって初飛行は数か月延期されたほどでした。
その一方、円盤翼の利点である低速性能とSTOL性は極めて良好で、V-173は低速域でも失速やスピンに入ることなく飛び続けることができ、離陸も風速25ノット(約46km/h)の向かい風さえあれば最短6mの距離で行えたとか。実質、ゼロ距離で離陸が可能だったといえるでしょう。
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