“空飛ぶ円盤” アメリカの珍機「V-173」初飛行 - 1942.11.23 UFOと間違えてもしょうがない?
住民はUFOと勘違い!?
試験飛行は1947(昭和22)年3月まで続けられ、約4年半のあいだに190回のフライトを実施し、その総飛行時間は約131時間にもなりました。なかには、史上初の大西洋単独無着陸飛行を成し遂げた飛行家チャールズ・リンドバーグが操縦を行った回もあったといいます。また、円盤状の独特の形状から、その飛行を目撃したコネティカット州の住民から、まさしく「空飛ぶ円盤」に勘違いされたという面白いエピソードもあります。
V-173の結果に満足したアメリカ海軍は、その後、本格的な円盤戦闘機としてXF5Uを発注。しかし、同機は試作機が2機作られただけで初飛行することなく計画は中止となり、その2機も海軍の命令によって破壊処分されてしまいました。
一方、V-173は飛行試験終了後に保管され、1960(昭和35)年にはスミソニアン博物館へ寄贈されます。しかし、長年の保管によって機体が劣化したことから、2003(平成15)年にテキサス州ダラスの修復施設へと移送され、そこで9年もの歳月を掛けて修復作業を受けることになりました。特に機体を覆う綿布の修復は大変で、なんと約8万1000回もの手縫いによる修繕が行われたそうです。
修復を終えたV-173は、2022年11月現在、テキサス州ダラスにある航空博物館「フロンティア・オブ・フライト・ミュージアム」にて展示されています。本機は円盤機という珍しい機体であり、当時の実機が残っているという意味でも貴重な存在です。
見た目は「フライング・パンケーキ」という愛称そのままの感じですが、実物を詳細に見ていくと、その外見に起因した苦労と対策も感じることができるでしょう。
【了】
Writer: 布留川 司(ルポライター・カメラマン)
雑誌編集者を経て現在はフリーのライター・カメラマンとして活躍。最近のおもな活動は国内外の軍事関係で、海外軍事系イベントや国内の自衛隊を精力的に取材。雑誌への記事寄稿やDVDでドキュメンタリー映像作品を発表している。 公式:https://twitter.com/wolfwork_info
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