日本の戦闘機採用で起きた「奇跡の大逆転劇」 米の推薦機を退けた空自トップの言葉とは

2022年のサッカーW杯カタール大会の第1戦で、強敵ドイツに鮮やかな逆転勝利を収めた日本。同じような大逆転の採用劇が60年以上前、航空自衛隊の次期戦闘機選定でもあったとか。大どんでん返しはどう進んだのか振り返ります。

結果的に空自の役割にベストマッチ

 では、この大逆転劇の理由はなんだったのでしょうか。

 まずひとつは、やはりG-98J-11の実機が存在しなかったことです。主力戦闘機という一国の国防にとって最重要ともいえる航空機を、セールス・トークによる「絵に描いた餅」状態で購入を決めるわけにはいきません。

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航空自衛隊のF-104J「スターファイター」戦闘機(画像:航空自衛隊)。

 ふたつめは、ロッキード製F-104は最初からマッハ2超えの機体だったのに対し、グラマン製G-98J-11は、マッハ1がやっとのF11Fを何とか「嵩上げ」してマッハ2を目指すというものであり、その部分に危なっかしさを含んでいたからです。

 そして3つめが、航空自衛隊戦闘機の主任務が領空の防衛という性格上、スクランブル発進後できるだけ速やかに高度を得られる上昇力と、同じく、できるだけ速やかに当該空域への到達を可能ならしめる加速性が求められたことにあります。この点では、F-104が圧倒的に優れていたといえるでしょう。

 かくして選ばれたF-104「スターファイター」には、F-86F「旭光」とF-86D「月光」に続いて「栄光」という自衛隊特有の愛称が与えられました。もっとも、日本国内では三菱重工業でノックダウン生産およびライセンス生産が行われたため、本機の細長い機影に引っかけて、現場などでは「三菱鉛筆」などというあだ名でも呼ばれたとか。ちなみに、三菱鉛筆と三菱重工はまったく関係性のない別会社です。

 なお、その後、航空自衛隊が対領空侵犯措置、いわゆるスクランブル(緊急発進)などでF-104を運用するようになると、同機が最適の機体だったことは歴史が証明しています。つまり「蒼空の大逆転」の結果は、大正解といえるものでした。

 2022年11月27日には、日本にとってワールドカップ カタール大会第2戦となる対コスタリカ戦が控えています。ドイツ戦で華麗なる大逆転劇を収めた日本代表、航空自衛隊の領空侵犯措置と同じく、鉄壁の護りでコスタリカの攻勢を防ぎ、F-104J「スターファイター」のような高速性で点をとって日本に「栄光」をもたらしてほしいものです。

【了】

【写真】キモとなった「J79エンジン」&編隊飛行する空自F-104戦闘機

Writer:

東京・御茶ノ水生まれ。陸・海・空すべての兵器や戦史を研究しており『PANZER』、『世界の艦船』、『ミリタリークラシックス』、『歴史群像』など軍事雑誌各誌の定期連載を持つほか著書多数。また各種軍事関連映画の公式プログラムへの執筆も数多く手掛ける。『第二次世界大戦映画DVDコレクション』総監修者。かつて観賞魚雑誌編集長や観賞魚専門学院校長も務め、その方面の著書も多数。

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