目標は台風や噴火! 自然災害にあえて飛び込む「観測飛行」パイロットというお仕事

観測飛行を行う常設の機関がないので予算面も悩みどころ

 こうした観測飛行は、前記したように大学や研究機関の主導で行われています。つまり、それら大学や研究機関において予算が下りないと観測飛行の依頼もないわけで、実際そうした時期もあるそうです。

 もちろん、DASが展開する航空機を用いた事業は、観測飛行のみではありません。たとえば「μ(マイクロ)G実験」という、飛行機内で疑似的に無重力空間を生み出す実験飛行も行っています。

「国際宇宙ステーションの運用、利用が進み、航空機によるμG実験に対する需要が縮小し予算が減少傾向であり、最近では多かった時期の半分程度しかμG実験のフライトはしていません。大学が単独で実験する場合などは、何度かのフライトでデータを取得する方が実験精度も上がるので好ましいものの、予算の関係から1回のフライトで、できる限り有効なデータを取得することに苦労しています」(北原さん)

 DAS側では「こういうフライトも出来る」とアピールすることはできますが、最終的には大学や研究機関が依頼してくれるのを待つしかありません。そのため、政府が主導して、常に観測飛行用の機体をチャーターして欲しいという声も、研究者のあいだにはあるようです。

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ダイヤモンドエアサービスの北原龍一機長(画像:DAS)。

「観測飛行用の機体をチャーターしたい」という声には、予算のほかに、即応性という面の課題もあります。

「台風が来た、地震が起きた、火山が噴火したといった自然災害が発生した場合、現状だと依頼が来てからそれ用の機材を機内に設置するので、最低でも飛び立つまでに2、3日かかります。東日本大震災のときは、徹夜で総がかりで準備をして翌日には飛び立ちましたが、これは例外であって、いつでもそのようにできるものではありません。常に専用の機体が待機するシステムがあれば災害直後に現場へ急行できるのですが、そうできないのはもどかしいですね」(北原機長)

 たとえばアメリカには、ハリケーンを調査する「ハリケーンハンター」のように軍や省庁が管理運営しているチームや、そうしたチーム専用にチャーターしている機体があります。北原機長によると、限られた予算のなかでも、目覚ましい成果を出している大学や研究機関もあるそうです。海水温上昇による台風の大型化への懸念や、南海トラフ地震の危機なども叫ばれている昨今、こうした観測飛行がもっと円滑に行えるように祈るばかりです。

【了】

【画像】台風の中へも飛びます! DASの「ガルフストリームIV」をもっと見る

Writer: 斎藤雅道(ライター/編集者)

ミリタリー、芸能、グルメ、自動車、歴史、映画、テレビ、健康ネタなどなど、女性向けコスメ以外は基本やるなんでも屋ライター。一応、得意分野はホビー、アニメ、ゲームなどのサブカルネタ。

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