世界最速の航空機=伝説の金食い虫! SR-71「ブラックバード」ミサイルかわすも予算で“撃墜”

燃料すら専用品「金食い虫」SR-71の実態

 燃料も高温に耐えられるJP-7という特別なものがわざわざ開発されています。SR-71の過酷な運用環境でも問題なく使用できるものの、合成燃料のため製造に手間が掛かり、この機体のみで使われるために大量生産によるコストダウンも望めないというシロモノ。そのため、1時間ほど飛行すると燃料代だけで1万8000ドル(日本円で約237万円)もかかったといわれています。

 加えてJP-7は専用燃料だったために、燃料を補給する空中給油機も専用の装備が必要となりました。アメリカ空軍ではKC-135QというSR-71専用の空中給油機が56機も準備されました。

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JP-7専用の空中給油機KC-135Qから空中給油を受けるSR-71(写真:アメリカ空軍)。

 マッハ3で飛行するSR-71は常時アフターバーナーを使用して飛んでいる状態であることから、偵察任務では複数回の空中給油が必須でした。このため、予備機も含めると複数のKC-135Qを準備する必要があります。たとえば1973(昭和48)年の第4次中東戦争における偵察任務では、10時間のフライトで6回の空中給油を行いましたが、その時には1機のSR-71のために予備機も含めて14機ものKC-135Qが準備されたといいます。

 このように、SR-71のマッハ3という速度性能は膨大なコストの上に成り立っていたといえるでしょう。燃料や備品だけでなく航空機に関わるすべてが特殊なため、機体を維持するための支援体制がこの機体だけに用意される特別なものとなっていました。これらの経費を合わせると、SR-71の運用コストは1時間あたり約20万ドル(約2632万円)、年間の費用は2億ドル(約263億円)以上だったとか。

 だからこそ、国防予算が潤沢であった冷戦期ならともかく、旧ソ連が崩壊し、国防予算の見直しが行われると、高コストだったSR-71は真っ先に削減の対象になったのです。

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