2023年「脱・アブラ元年」なるか 注目の新造船5選 燃料“切り替え可能”な船が続々

液化CO2輸送船(2023年度後半竣工予定)

 三菱重工業の下関造船所江浦工場では、LCO2(液化CO2)輸送船が建造中です。LCO2タンク容積は1450立方メートルと大きく、世界初のCCUS(CO2回収、輸送、利用、貯留技術)を目的としたLCO2輸送船として、2023年度後半の竣工を計画しています。

 同船は三菱造船が内・外航船の船舶管理などを手掛ける山友汽船から受注したものですが、まずNEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)の実証事業としてエンジニアリング協会が借り受け、京都の舞鶴発電所で回収したCO2を、貯留地である北海道の苫小牧まで輸送します。この実証には川崎汽船が参画しており、輸送・荷役時の安全性評価と技術的なガイドラインの策定に取り組むとのことです。

 また三菱造船は、CCUSバリューチェーンの構築に必要な、容量3万立方メートル以上の大型LCO2船への搭載を想定した球形カーゴタンクシステムや、5万立方メートル型「アンモニア・LCO2兼用輸送船」を商船三井と共同で研究しています。

メタノールバンカリング船(2023年末竣工予定)

 佐々木造船(広島県大崎上島町)では2023年末の竣工を目指して、シンガポール初のメタノールバンカリング船を建造しています。船型は新開発となる4000重量トン型2基2軸のケミカル船で、同国の燃料供給事業者グローバルエナジートレーディング(GET)から受注しました。2024年にはバイオ燃料とメタノールを含む、あらゆる種類の燃料を供給する予定です。

 メタノールは、CO2を分離・回収して再利用する技術によって人工的に製造される「カーボンリサイクル燃料」であり、GHG排出ゼロに向けた選択肢の一つとして位置づけられています。たとえば、世界最大規模のコンテナ船社APモラー・マースク(デンマーク)は、メタノール燃料エンジンを搭載した1万6000TEU型コンテナ船を2025年までに最大12隻導入することを明らかにしているほか、日本企業でも日本郵船や商船三井がメタノール輸送でメタノール燃料船を導入しています。

 こうした動きから、世界でも有数の船舶向け燃料補給拠点となっているシンガポールで、メタノールバンカリング船が必要となっているわけです。佐々木造船で建造中のバンカリング船は重油焚きですが、同社はメタノール燃料船や水素燃料船も計画しており、これからが楽しみです。

【写真】2023年注目の新造船 写真でイッキ見

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