課題山積! それでもウ軍にM1「エイブラムス」&「レオパルト2」が待望されたワケ

順調に供与されたとして…ウクライナ有利に傾くのか?

 これまでのウクライナにおける戦訓で、機甲戦闘のやり方が変わってきています。戦車にとって隠れた歩兵はこれまで以上に難敵で、歩兵の対戦車火力に距離、方向を問わず警戒しなければならず、戦車の行動は制約されています。大規模な戦車戦も起きず、運用されているのはせいぜい14両程度の中隊レベルです。

 攻勢には戦車の衝撃力と速力は必須ながら、広い戦線に少ない戦車戦力をどう配置するか密度配分がポイントで、単純な「ロシア軍T-72 vs レオパルド2&M1&チャレンジャー2の西側戦車連合」という図式にはなりそうになく、ウクライナを有利にする保証はありません。

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2018年の「ヨーロッパ戦車競技会」で「レオパルト2」やM1、「チャレンジャー2」と放列を並べるウクライナ軍のT-64、手前から2両目(画像:アメリカ欧州軍)。

 1月19日に英国防省は、ロシアが最新鋭のT-14を投入するかもしれないという情報を流しましたが、実戦力というよりプロパガンダの意味が強いと分析しています。また22日にはフランスのマクロン大統領が、同国の主力戦車「ルクレール」を供与する選択肢は「排除されない」と述べています。

 現実的には、T-14や「ルクレール」がウクライナに登場する可能性は低いと見られるものの、戦車に言及するだけで外交的インパクトがあることが分かります。いみじくも25日に、ゼレンスキー大統領が欧米との「戦車連合」が形成されたと声明を発したように、ウクライナが西側戦車を欲しがる最大の理由はこの「外交的インパクト」かもしれません。

【了】

【画像】フランスも戦車供与か? 主力戦車「ルクレール」 の最新型!

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Writer: 月刊PANZER編集部

1975(昭和50)年に創刊した、40年以上の実績を誇る老舗軍事雑誌(http://www.argo-ec.com/)。戦車雑誌として各種戦闘車両の写真・情報ストックを所有し様々な報道機関への提供も行っている。また陸にこだわらず陸海空のあらゆるミリタリー系の資料提供、監修も行っており、玩具やTVアニメ、ゲームなど幅広い分野で実績あり。

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