絶好調の商船三井、なぜ「新造クルーズ船」を? 日本郵船は一足先に 見据える海運バブルの“次”
クルーズ船の経済効果とは でも建造に踏み切れなかった
今回、商船三井がクルーズ船の建造を決めた背景には、国際クルーズの受け入れ再開によるクルーズ需要の回復が見込まれる一方、船齢30年を超える「にっぽん丸」の代替船が必要になっていたこと、さらに海運市況の高騰を受けた好業績が続き、同社の投資余力が向上していたことが挙げられます。
日本は新型コロナウイルスの感染拡大に伴って取り止めていた外国クルーズ船の受け入れを、2023年3月から再開します。コロナ禍前の外航クルーズ船寄港による経済効果は、訪日旅行消費だけでも年間約805億円。訪日クルーズ旅客数は2019年まで3年連続で200万人を超えていました。日本人のクルーズ利用客数も増加傾向が続き、2019年の実績では約38万人がクルーズ船に乗っていました。
コロナ禍によりクルーズ船の運航は休止を余儀なくされたものの、2020年7月には欧州で、2021年6月頃からはアメリカやアフリカ、中東で国際クルーズが再開。2022年後半にはシンガポールやマレーシア、インドネシアでもクルーズ船の寄港が徐々に始まっています。
日本では商船三井客船の「にっぽん丸」が国際クルーズの再開第1号として、2022年12月15日に横浜港を出港し、モーリシャスやシンガポールなどを巡りました。国内の港湾も国際クルーズ船の寄港に前向きで、早期再開の要望が多く出されているといいます。
ただ「にっぽん丸」が竣工したのは1990年9月のこと。2010年に行った船体の塗装デザインを一新する大改装をはじめ、時代の変化に合わせて船内設備のアップデートを進めているものの、より多くの需要を取り込むには後継となる新造船の整備が課題でした。特に、1隻当たり500億円以上とされている高額な船価がネックとなり、建造に踏み切れないでいたのです。
ちなみに2022年12月末時点での船価は、LNG船で323億円程度、VLCC(大型原油タンカー)で156億円程度とされているため、クルーズ船がどれだけ高価かわかるかと思います。
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