“史上最大の作戦” 陰の功労者「バレンタインDD」戦車とは? 実用的だったのに実戦投入されなかったワケ

第2次大戦の欧州戦線でターニング・ポイントとなったノルマンディー上陸作戦。「史上最大の作戦」と形容されるこの戦いに、参加こそしなかったものの、陰ながら成功を支えた戦車がありました。

「バレンタインDD」の「DD」って?

 水陸両用戦車を造る場合、いちばん問題になるのは、「水底を進む戦車」にするか、はたまた「水面に浮く戦車」にするかです。両案とも一長一短があり、できることなら後者の方がよいのですが、重い戦車を浮かせるのは難しいのです。ところが、ストラウスラーは妙案を考えつきます。

 それは、戦車の車体の周りにキャンバスのスクリーンを広げて、洗面器のようにして水面に浮かすというアイデアでした。そしてこのスクリーンは、戦車が水上航行を終えて陸地に到着すると、すぐに畳んでしまえるようになっていました。

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通常のバレンタイン歩兵戦車(柘植優介撮影)。

 一方、水上を進む動力は、履帯(キャタピラ)を動かす動力をギアで車体後部に取り付けたスクリュープロペラへと送り、これを回すことで生み出しました。これならば、浅瀬ならスクリュープロペラを回しながら履帯で走行でき、完全に上陸した後は、ギアを外してスクリュープロペラを止めた状態で履帯走行ができます。

 こうして、ストラウスラーのアイデアに基づいたいくつかの装置を後付けすることで、新たに専用の浮航戦車を開発するのではなく、既存の優秀な戦車を、浮航戦車に転用できる道筋が立ちました。

 その後、陸上走行と水上航行の両方が可能というところから複合運航という意味の「Duplex Drive」という名称が与えられ、それに必要な装置は、頭文字を並べてDDデバイスと呼ばれるようになります。

 1941年6月、まず軽戦車Mk.VII「テトラーク」にDDデバイスを装着し、各種テストを実施、良好な結果が得られました。そこで陸軍省は実用型の浮航戦車の生産を命じ、当時のイギリス製戦車でもっとも信頼性に優れ、生産も順調だったバレンタイン戦車が、そのベースに選ばれます。

【スクリーン展開!】洗面器みたいになって水に浮く「バレンタインDD」戦車(写真)

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