H3ロケット打ち上げ「失敗」? いえ「中止」です! 実は“まだ飛んでいない” その定義

むしろ「役目を果たした」と見ることもできる

 現在、打ち上げ場である種子島宇宙センターでは原因究明作業が進んでいます。打ち上げ時にはロケット搭載機材や地上機材の間で多くの通信が行われ、データが記録されます。とはいえ、それは画面上に「どこそこで不具合がありました、それはこのような現象です」というような、わかりやすいデータとなって見えるわけではありません。

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緊急停止直後のH3ロケット。本来なら白い煙が出続けるはずが、エンジン停止のため途切れている(画像:しないつぐみ/東京とびもの学会)。

 電圧の記録やスイッチのオンオフに伴う電流の継断の記録といった、ある意味アナログな記録を元に、技術者が回路図をたどって不具合箇所にたどり着くという地道な作業になります。この作業に当たるのは、当該部分の設計を行った技術者本人です。中止後の記者説明会でも、H3プロジェクトを統括する岡田プロジェクトマネージャーは、「設計をよくわかった人物が究明を行うので、あまり時間はかからないだろう」との見方を示しています。

 筆者は、開発がスタートした当初からH3ロケットのプロジェクトを長らく追い続けてきましたが、ロケット開発の困難さのひとつに、「実際に動作させて検証するのが難しい」場合がある点が挙げられます。ゆえに、新型ロケットは始めの何機かを試験機として打ち上げます。H3も同様です。今回の不具合も、本運用に入る前の問題点洗い出しという、試験機に課された役割を果たしたという見方もできるでしょう。

 打ち上げ延期は残念なことでしたが、ロケットや衛星はそのまま残っているので、楽しみがほんの少し先に延びただけとも言えるのではないでしょうか。早期に原因究明と対策が行われ、無事に飛び立つ時を楽しみに待ちたいと思います。

【了】

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コメント

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6件のコメント

  1. 『中止』とか『失敗』とか見た人それぞれ言論は自由のはずです。
    あれから何日経ちましたか?
    単語の使い方よりも、これから先如何に改善がなされるかが重要ではないのでしょうか?
    少なくとも予定日に成功しなかった要因が想定外であった事と、ロケットは無事であることは事実です。
    関係者でもない人々がひとりの記者の言葉ひとつに騒ぎ立てる必要は無いと思います。。記者会見で記者の発言に規則があったのならば別でしょうが、記者が感じたことを自由に発言しただけのことで、それが世間一般の意見とは限らない。
    それよりも次にどう対策を立てるのか、暖かく見守りたいですね。
    宇宙の歴史に比べればほんの一瞬の立ち止まりです。
    資金は国民の税金を沢山使っているのでしょうから、最悪の事態を回避し確実に一歩進んでくれていることを願います。

  2. 天候の問題もクリアしメインエンジンも点火したのに、プログラムが異常検知して補助エンジンに火が付かなかったということは、マシントラブルが発生したということだから結局は失敗では?
    打ち上げ前に止められたから大失敗にはならずに済んだが。

  3. なぜこの技術の粋をあつめたロケットは垂直に帰って来れないんですか?

    • H3は端的に言えばH2のコストダウン版であり、そういった機能があれば理想的なのですが日本の国力を結集してもアメリカの民間企業には敵わないのが現状なのです。
      私も仕事で失敗して悔し涙を流せば周りが感動してくれる環境で働きたいものですね。

  4. 「失敗」じゃなくて「中止」で正しいですよ。ロケットには打ち上げ成功率って指標があって、成功・失敗の定義はほぼ万国共通です。(目的達成/打ち上げ回数で計算)

    H3は打ち上げてもいませんから、成功にも失敗にもカウントされません。

    打ち上げ再開できる状態を維持してるんだから、日本語としても「中止」⇔「再開」の関係にあるのは明らかでしょう。「失敗」言いたい人の中では「失敗」⇔「再挑戦」になってるみたいですが・・・

  5. ・成功=打ち上げの結果、宇宙機を目指す軌道に送り届けることができた。と説明しているのに、宇宙機を目指す軌道に送り届けることをできなかったことをなぜ、「失敗」と表現しないのか不思議。ちゃんと「失敗」と言って対応していれば、本日のような「失敗」は起きないと思う。この論理で行くと、破壊指令はちゃんと機能したので、失敗ではないと言う論理になるのだろうな。人は失敗を経験して成長していくものだと思う。失敗を失敗と認識しなければ、成功はないと思う。