ロシア専門家 小泉 悠が説く ウクライナ紛争「落としどころ」は? プーチンは拳を下ろすか

ロシアのウクライナ侵攻が始まってから2023年2月24日で1年を迎えました。泥沼の様相を呈し、いまだ終わりの見えないウクライナ紛争、戦火が止むことはあるのでしょうか。新進気鋭のロシア専門家が情勢をひも解きます。

停戦/終戦に至る落としどころは?

 そうなると、この戦争の「落としどころ」なるものは、なかなか見出しにくいように思われます。少なくとも、短期的にどちらかが圧倒的な優勢を獲得して自らの意志を強要できるような状態はなかなか望み難いでしょう。また、双方の継戦能力が簡単に尽きないことも前述のとおりであり、こうなると戦争はかなり長期化する可能性が高いと言わざるを得ません。

Large 20230225 01
戦闘で荒れ果てた街にたたずむ親子(画像:ウクライナ国防省)。

 もちろん、ここまで述べてきたことは純粋に軍事的な観点からのハナシであるため、どこかの時点で政治首脳同士の妥協が成立する可能性は排除できません。また、どんな戦争も永遠に続くということはないので、いずれは軍事の領域から政治の領域へと軸足が移ってくることは間違いないでしょう。

 このようなフェーズにおいて、ウクライナ側が考えている「落としどころ」はおおむね判明しています。昨年3月にトルコのイスタンブールで行われた停戦交渉の内容や、同年9月にフォグ・ラスムセン前NATO(北大西洋条約機構)事務総長との連名で発表された「キーウ安全保障盟約」案などを見ると、「1:政権の進退・国家体制のあり方には一切言及しない(ロシアの内政への介入を認めない)」「2:NATOには加盟しない(中立化を受け入れる)」「3:ただし独自の重武装を保有し、平時から西側諸国との密接な安全保障協力を行う」、といったあたりが、ウクライナの描く構想のようです。

 ただ、これはあくまでもウクライナにとっての「落としどころ」であって、ロシアが受け入れるかどうかは全く別問題です。そもそも今回の戦争に関してプーチン大統領が主張した「ゼレンスキー政権はネオナチでありロシア系住民を迫害・虐殺している」「密かに核兵器を開発している」「このまま放置すればウクライナにアメリカのミサイルが配備されてロシアの安全が脅かされる」といった話にはいずれも根拠が乏しく、実際に何を考えて侵略に及んだのかがどうにも判然としません。

 よって、この戦争の見通しに関する最大の不確定要素は、それを始めたロシア自身にあるように筆者(小泉 悠:東京大学先端科学技術研究センター講師)は考えます。

【了】

【戦争なければ教えることもなかった……】児童に不発弾の危険性を教える専門授業の様子

ロシア軍のウクライナ侵攻 最新情勢 戦争はどうなっているのか

最新記事

コメント

記事ランキング

  1. 家族が「SSSS航空券」を引き当ててしまった…! 乗る前から“異変” 保安検査員も「Oh…」 誰でも起こり得る“緊迫の一部始終”
  2. “まるで高速”な無料バイパス「全線4車線化」へ変貌開始! 一部の上下線分離まもなく 対面通行を解消 国道8号
  3. 「危なすぎる!」阪神高速“中の人”がブチギレ!? “衝撃動画”とともに呼びかける「ドライバーが守るべき3つのこと」とは
  4. ウクライナ軍の「1000機の無人機」がモスクワの製油所を襲撃!“タンクが吹き飛ぶ瞬間”を捉えた映像を大統領が公開 今後の影響は?
  5. ロシアのミサイル部品工場が「大炎上」 ウクライナ軍の航空機から発射した巡航ミサイルが「直撃」か
  1. 家族が「SSSS航空券」を引き当ててしまった…! 乗る前から“異変” 保安検査員も「Oh…」 誰でも起こり得る“緊迫の一部始終”
  2. あと1年足らずで「現金でバス乗れなくなります」 全路線“完全キャッシュレス化”疑問に応えるサイト開設 京王バス
  3. ETCの手前で「ガシャン!」高速入口に吊るされた「黄色い鎖」の正体は? 傷つく覚悟で“あえてぶつける”超アナログな理由
  4. ロシア軍の爆撃機が「真っ逆さまに墜落」 地上に激突する瞬間を捉えた映像が公開 “巨大な黒煙”が立ち上る
  5. 「“再有料化”でいいから4車線化して」→普通車280円になって1年 利用者負担で勝ち取った“効果”あきらかに 八木山バイパス