アメリカ「本気モード」の象徴? ウクライナ供与の「架橋戦車」は戦況を一変させるか その威力とは

アメリカの「本気モード」の意思表明?

 西側MBT“三羽ガラス”と比べると、架橋戦車は一見「地味な脇役」で、大手メディアもその重要さにあまりピンとは来ていないようです。

 しかし世界の軍事関係者の間では「いよいよアメリカが本気モードに入ったことを示唆するアイテムかもしれない」と深読みする向きもあります。

 というのも、ウクライナのイメージは「広大な平坦地で戦車部隊の進撃には理想的」ですが、実はよく見ると細い小川や用水路、運河が無数にあります。

 もし西側MBT“三羽ガラス”を単に防御に使うだけであれば、守備する場所は概ね決まるので、架橋戦車が急に必要となる場面はそう多くはありません。しかし、ウクライナ軍が「スピードが命」の電撃戦のような進撃を考えている場合は、事前に橋を落とされた川や戦車壕を素早くクリアすることが重要で、架橋戦車は必須なわけです。

 さらにウクライナはロシア同様、旧ソ連のMBT開発基準「重量50トン以下」を踏襲しているため、既存の軍事資源やインフラも50トン以下の基準で造られています。大半の一般道路の橋梁は、50トン以上の戦車が渡れば落ちてしまうのです。残念なことに、西側MBT“三羽ガラス”はどれも60トン超のため、通行するなど論外です。こうした事情も、架橋戦車の供与が急がれた一因のようです。

 果たしてロシア側は架橋戦車の供与という“シグナル”をどうとらえ、どのような対応策で臨むのでしょうか。

【了】 

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Writer: 深川孝行

1962年、東京生まれ。法政大学文学部地理学科卒業後、ビジネス雑誌などの各編集長を経てフリージャーナリストに。物流、電機・通信、防衛、旅行、ホテル、テーマパーク業界を得意とする。著書(共著含む)多数。日本大学で非常勤講師(国際法)の経験もある。

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コメント

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2件のコメント

  1. >>実はよく見ると細い小川や用水路、運河が無数にあります。

    それ以上に、ウクライナは泥濘地が多い事で有名
    独ソ戦時も大きな戦車戦があったのは、冬季等の泥濘地が凍って固まり、戦車が通行できるようになる時季が多いのはそういう理由がある。

    今時のロシアの侵攻時にも泥濘にガッツリ埋まって身動きできなくなった複数のロシア戦車が鹵獲されたりしている。
    雪上を全速力で移動できる戦車ですらウクライナの泥濘地ではズブズブと埋まってしまい身動きができなくなる。

    上記のような泥濘地が多く戦車が通行可能な場所も限られているので、西側の戦車が全速力で前進できる区間は非常に限られていると思われます。
    つまり、M60戦車橋の速度でも十分対応可能でないかと。

    ロシア軍の戦車がウクライナ軍の包囲から逃げ出す為に歩兵をタンクデサントした状態で戦闘速度ではない高速で移動している動画を動画サイトで見たけど街中を出たら途端に通行可能な場所が限られていて、まさにウクライナ軍側のキルゾーンと化してましたね。

  2. なんかこう、小さい仕切りの風船を任意の形状に膨らませて渡らせる事ができれば軽量化できるのでは?と思ったが。どうしても鉄の塊の橋ともなると、それ自体の重みで泥濘には弱そう。