陸自「総火演」速報 今年から一般公開なし 74式戦車「最後の共演」隊員から愛され半世紀
総火演ではお馴染みの稜線射撃も
74式戦車は、90式戦車や10式戦車のように自動装てん装置を搭載しておらず、砲弾の装填は人力。しかも、コンピューター制御の部分が多くなく、機械制御と乗員の手によるアナログ制御がほとんどであるがゆえに、この2車と比べ整備性が良く、故障しても現場で修理しやすいというハナシも聞きます。
加えて、陸上自衛隊の戦車乗りのなかで、初めて操縦した戦車が74式戦車であるという隊員が、いまだかなりの割合を占めているため、そういった面からも愛着ある隊員は多いといえるでしょう。
また、油気圧サスペンションで車体を前後左右に傾斜させられる機構は、駐屯地記念行事など各種イベントで披露すると、民間人に比較的好評を博すものでもあります。
実際、今回の総火演でも74式戦車はこの油気圧サスペンションによる姿勢制御で、傾斜地から砲塔だけを敵方に出して射撃する「稜線射撃」という戦術を実施していました。
射撃したのは後段演習のみでしたが、第10戦車大隊所属の74式戦車4両が、89式装甲戦闘車や16式機動戦闘車らとともにチームを組んで、90式戦車や10式戦車の進撃を火力支援するという状況が披露されました。
74式戦車が総火演に姿を見せるのは今回がラストですが、2024年3月までは現役であり続けます。つまり、動く姿、空砲を撃つ姿はそれまで見ることができるので、もし近くに陸上自衛隊の駐屯地があるなら、記念行事に出かけてみてください。ひょっとしたら、肉眼で動く74式戦車を見ることができるかもしれません。
総火演が終わったとはいえ、74式戦車の勇姿を見るチャンスはまだあります。今のうちに、その元気な姿を目に焼き付けましょう。
【了】
Writer: 武若雅哉(軍事フォトライター)
2003年陸上自衛隊入隊。約10年間勤務した後にフリーフォトライターとなる。現場取材に力を入れており、自衛官たちの様々な表情を記録し続けている。「SATマガジン」(SATマガジン編集部)や「JWings」(イカロス出版)、「パンツァー」(アルゴノート)などに寄稿。
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