世界最速の潜水艦は「水中の暴走族」!? 人力/危険な燃料/核/ハイブリッド…150年の進化!

日本最速の潜水艦は80年以上前に誕生

 シーウルフ級原子力潜水艦はポンプジェット推進を採用しているのが特徴で、これにより35ノット(約64.8km/h)という高速性能を実現しています。ただ、このクラスは高性能を目指した結果、建造コストも高くなってしまったため、調達は3隻で終了。次級のバージニア級原子力潜水艦では、調達コストを下げた結果、速力は34ノット(約63km/h)に低下しています。

 なお、中国(093級)やイギリス(アスチュート級)は水中速力30ノット(約55.6km/h)、フランス(シュフラン級)は同25ノット(約46.3km/h)を記録しています。

 では、視点を変えて日本の潜水艦は、どの程度の速さなのでしょう。

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アメリカ最速の潜水艦「シーウルフ」(画像:アメリカ海軍)。

 我が国の潜水艦で最速の潜水速度を記録するのは、1938(昭和13)年に進水した「第七十一号艦」です。

 同艦は基準排水量195tの超小型艦で、水中速力25ノット(約46.3km/h)を計画しましたが、ドイツ製機関が輸入できなかったことで、速力が低下し21.3ノット(約39.4km/h)となりました

 なお、秘密兵器である甲標的試作型や特攻兵器「回天」はより高速ですが、潜水艦とは言い難いので除外します。

「第七十一号艦」はあくまでも実験艦のため、同型艦は存在しません。しかし、この艦の開発データにより、水中高速型潜水艦である伊二百一型潜水艦(水中19ノット:約35.2km/h)や、波二百一型潜水艦(水中13ノット:約24.1km/h)が実現しています。

 太平洋戦争後に目を転じると、海上自衛隊向けの潜水艦は、1番艦が1971(昭和46)年に就役したうずしお型以降、現用のおやしお型、そうりゅう型、たいげい型まで水中速力20ノット(約37km/h)を維持しています。ただ、海上自衛隊の潜水艦の場合は、あくまでも「公称速力」です。最大速力ではないため、もしかしたらこれ以上のスピードを出すことが可能かもしれません。

 ただ、潜水艦は速いことが望ましいものの、機関出力を高めると静粛性が損なわれたり、建造費が高騰したりといった問題も生じるため、1970年代のソ連海軍を頂点として、現在では抑え気味となっています。とはいえ、冒頭に記したように近年ではリチウムイオン電池や燃料電池を搭載した新型艦が登場しています。もしかしたら今後、再び高速性に優れた潜水艦が登場するかもしれません。

【了】

【見たことある?】世界最大の潜水艦&潜水艦内部のトイレほか(写真)

Writer: 安藤昌季(乗りものライター)

ゲーム雑誌でゲームデザインをした経験を活かして、鉄道会社のキャラクター企画に携わるうちに、乗りものや歴史、ミリタリーの記事も書くようになった乗りものライター。著書『日本全国2万3997.8キロ イラストルポ乗り歩き』など、イラスト多めで、一般人にもわかりやすい乗りもの本が持ち味。

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