「総火演」はエンタメか 陸自の名物イベント一般公開中止もネット配信 “見せること”の意味

一般公開の中止が発表されて初の「総火演」。「ミリタリーファン向けのエンタメであり、自衛隊本来の任務ではない」といった意見も聞かれますが、インターネット配信は行われました。“見せること”にはどのような意味があるのでしょうか。

射撃機会が多かった中距離多目的誘導弾

 派手な実弾射撃を見せる戦車や火砲は主役のようですが、毎年の演習規模や演目、使用装備は時々の情勢で変化しています。実際の戦い方の変化を反映してか、「領域横断作戦及び統合運用の要素」となる「宇宙」「サイバー」「電磁戦」が強調されるようになりました。電子戦装備や無人機が主役に移り、戦車や火砲の派手な射撃は少なくなって、絵面的には地味になった印象です。

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事実上最後に一般公開された2019年8月の富士総合火力演習(2018年8月24日、月刊パンツァー編集部撮影)。

 2023年の総火演で筆者ら(月刊パンツァー編集部)が注目したのは、中距離多目的誘導弾(中多)です。新装備ではありませんが、今年は射撃機会も多くその特徴をよく見せてくれました。ロシア・ウクライナ戦争では「ジャベリン」などの対戦車ミサイルが注目されましたが、中多もジャベリンに勝るとも劣らない有力な国産の火器です。

 中多は対戦車ミサイルですが、戦車や装甲車だけでなく、舟艇や非装甲目標、火点潰しにも使用できます。システムはコンパクトで高機動車1両に収まり、1秒間隔の連続射撃で同時多目標への対処能力に加え、撃ったらすぐに移動する撃ち放し能力を有しており、LOAL(発射後ロックオン)まで可能という優れもの。無人機と組み合わせた戦場ネットワークが構築できれば、頼りになる支援火器として有効な火力戦闘が期待できます。総火演では射座の1両が別目標に連続して誘導弾を命中させ、その性能を示しています。

 中多は各普通科部隊に配備が進んでおり、石垣駐屯地など離島防衛にはコンパクトで最適な装備です。ロシア・ウクライナ戦争では対戦車ミサイルばかりが喧伝されていますが、兵器の相関関係はじゃんけんのようなもの。戦車や火砲も必要であり、限られたリソースとアセットのバランスをどう取るかの問題です。

【写真】コロナ禍「一般公開中止」の総火演とは

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